一人の高校生の想いに応える複数のメディア
先日、ある一人の高校生が日曜日の夜遅くに、Yahoo知恵袋にどうしたらセールスフォースに入社できますか?という趣旨の投稿をしました。そしてその35時間後の火曜日の午前中に、弊社セールスフォースの採用担当が回答しています。
パッと見は、”高校生の質問にも真摯に答えるセールスフォースという素敵な会社”という出来事に見えるかもしれません。しかし私は、その舞台裏に本質があると思います。それを解説します。
以下の図が今回の流れです。順を追って見て行きましょう。
① 高校生はセールスフォースのコマーシャルを見ています。弊社を知った方法の1つです。セールスフォースというB2Bの会社を高校生が知っているというのに、私を含め、私の周りの社員ははじめ驚きました。最近になってテレビコマーシャルを流すようになりましたが、やはりテレビというメディアの力はまだまだ健在です。
② 高校生はYahoo知恵袋に質問を入れています。Yahoo知恵袋の最近のメディア力には強力なものがありますが、こういったQAフォーラムは形としては古いながらも新しい可能性を持っています。Quoraが企業と求職者の間のダイレクトチャネルになっていたり、最近、WiselikeというQAサービスが巨額の資金調達をしたことがニュースになったりしています。QAは、それだけコンテンツとしての魅力があるのでしょう。
③ とあるBotが、このYahoo知恵袋のポストをTwitterに流しています。
④ ある社員がソーシャルメディア上でセールスフォースを検索していたところ(日頃からこの社員はやっています)、この投稿に気づきます。こういった熱心な社員がセールスフォースにはいるからいいですが、普通はこんなことを趣味でやりませんよね。そこは、ソーシャルメディアのリスニングツールが活躍するのでしょう。ちなみにセールスフォースでは、いわゆるエゴサーチを定常的にやっていて、会社としてソーシャルメディアをウォッチしています。弊社受付の少し奥には、ソーシャルコマンドセンターというツールを利用したモニタリングの様子が見えますので、弊社へお越しの際には是非ご覧になってください。
⑤ 前述の社員が社内SNSのChatterにポストしています。社外のソーシャルメディアと社内のソーシャルメディアがつながった瞬間です。マーケティング、リクルーティング、コミュニティマネージャーなど、各部門の社員、マネージャーがChatterで会話し、回答することを決定し、回答内容をレビューして決定します。社外へのレスポンスを早めるには社内のスピードを上げなければなりません。社内のスピードをChatterが加速しています。
⑥ Yahoo知恵袋へ回答します。
ソーシャルメディアのYahoo知恵袋とTwitter、社内SNSのChatter、そして従来メディアのテレビ。一人の高校生の想いに複数のメディアが関わり、応える。これぞソーシャルエンタープライズです。
巻き込み力と拡散力を高める社内SNSのグループメンション機能
Facebookにはメンション機能があって、指定する相手に見てくれるようにすることができますよね。社内SNSにも同じようにメンション機能がありますが、Chatterの場合は、メンションでグループを指定することができます。
何がいいかというと、社内の人達を巻き込んで問題を解決するのがやりやすくなるんです。また、シェアされている情報を必要な人達に拡散するときにも役立ちます。
Salesforce社内では、このグループメンション機能が出てきた直後から、凄い勢いで使われ始め、今や、なくてはならない機能の1つになりました。
言葉やデモで説明するのが難しい機能なので、紙芝居を作ってみました。みてやってください。
私の知る範囲では、このグループメンション機能を持つ社内SNS製品はありませんが、皆様がお使いの社内SNSにはあるかもしれません。もしあれば、是非活用してみてくださいね!
エンタープライズ・ソーシャル・フェスティバル2013で再認識したリスク対処の重要性
昨日2013年8月1日、Looopsさん主催のエンタープライズ・ソーシャル・フェスティバル2013が盛況の内に無事終わりました。今までオンライン上の付き合いでしかなかった人にやっと会えたり、面白いソーシャル関連のサービスをしている方々と会話できたり、なにより、新しい仲間とイベントを作り上げることに関われたことが楽しかったです。手作り感覚で、終わった時は、昔、ライブをやった時のような打ち上がり感覚でした。
様々な気付きも得られましたが、その中の1つ、CSK Winテクノロジの前田さんのセッションの中で、エンタープライズ・ソーシャル・ネットワーク(以下、ESN)のリスクについて、話されていたのが印象に残っています。これを聞いて、リスクをお客様にきちんとご理解いただくことの重要性を、僕はまだまだ甘く見ていたのだなぁと思ったのでした。
さて、質問です。下記2つのどちらかを選べる場合、みなさんだったら、どちらを選ぶでしょうか?
a. 50%の確率で100万円もらえる。
b. 5%の確率で1億円もらえる。
手堅く a を選ぶ人もいるでしょうし、一発人生逆転狙いで b を選ぶ人もいるでしょう。また、冷静に期待値を計算して、b を選ぶ人もいるかもしれません。
では次の質問です。以下2つを選ばなければいけない場合、どちらを選びますか?
a. 50%の確率で100万円損
b. 5%の確率で1億円損
今度はほとんどの人が b を選んだのではないでしょうか。期待値を計算すると、a は50万円の損、b はなんと500万円の損です。それにも関わらず、人は b を選択してしまいます。リスクの話となると、過剰に反応してしまい、とにかくリスクは避けたいと感じて冷静に判断できなくなります。
前田さんは、このような質問を参加者にぶつけて、リスクを乗り越える難しさを説明されていました。(正確に覚えていないため、質問中の金額や表現、解説は、僕なりの理解で記載していますので、前田さんのセッション中の表現とは違います)
僕は今まで、ESNのメリットを説明してきた中で、お客様からリスクに関するご質問を沢山いただきました。「炎上しないか?」、「セキュリティ漏洩にならないか?」、「社員が遊んでしまわないか?」、その他多数。もちろん、1つ1つお答えしてきました。そして最後にはこう言っていました。「メリットとリスクを冷静に天秤にかけてください」。これじゃあダメなんだなぁと前田さんの話を聞いて思ったのでした。
これからは、ESNのメリットを訴求する一方、同じくらい力を入れて、リスクの方も説明して、対処できるものなのだということをご理解いただく必要がありますね。ソーシャルにしろ、クラウドにしろ、新しい価値を受け入れてもらうのは、理屈じゃない部分もあると、今回、学んだのでした。
新しいMac OSで、タグがいよいよ世の中に浸透するか!?
2013年6月、AppleのイベントWWDCで、Mac OS X Marvericksが発表されました。もうレコーディング動画も公開されていますね。私はMacは持ってないのですが、毎回、へーってな感じで横目で見ています。
沢山の魅力的な機能拡張があるのですが、私が注目したのは「タグ」のサポートです。
WWDCイベント会場では、タグのサポートが発表された時、一人だけ、熱狂的に叫んでいた人がいました。私もそんな気分です。やっと、まともなタグ付け機能がPCに実装されるんだ、と。
ソーシャルウェアの話をお客様に日頃する時、ソーシャルタギングの話もするのですが、なかなか知っている人が少なく、その威力を毎回一から説明しています。普段使うPC環境で、まともなタグ付け機能がOSレベルで使いやすく実装されれば、こんな状況は変わるのになぁと、ずっと思っていました。
やっと登場です。
インターネットで行われているタギングが、MacのローカルやiCloudのファイルに対して付けられて、後から検索できるようになります。レコーディング動画では、24分目からタグのデモが始まります。
1つのファイルに、複数のタグが付けられて、複数のタグで絞り込んで検索できます。タグ付けも、ドラッグ&ドロップで付けられたり、さすがのMacの操作性。どんなファイルにもタグ付けできるようです。タグ・エバンジェリストの僕としては、これだけでMac買っちゃいそうです。
実は、Windowsにもタグ付けの機能があります。でも、タグ付けできるファイルの種類が限られています。これは致命的。タグ検索の方法も、知る人ぞ知る的な操作でしか行えません。タグ検索を可能にするツールも出回っていますが、タグ情報をファイルの外部で管理するので、コピーなんかしているうちにすぐに整合性がなくなります。
タグは、フォルダ階層での管理よりもずっと柔軟で、ずっと拡張的です。さらにそれが共有されると、いままでにない情報共有の活性化につながります。Mac OS X Marvericksが出たことで、Windows OSも追従するかもしれません。
Mac OS X Marvericksは、タグ付けという新しい世界へ、皆を連れて行ってくれることでしょう。
<関連エントリ>
社内ソーシャルは組織を透明になんかしない
社内ソーシャルが組織を透明にするのではありません。透明になろうとしている組織が社内ソーシャルで透明になるのです。そういうように、つい最近、理解しました。
社内ソーシャルで、組織の縦横の壁を取り払って、組織を超えたコラボレーションを実現する、組織をフラット化する、などとよく言います。しかし、このようなことは、古くはメールの導入時に言われていました。そしてグループウェア時代にも同じように言われました。そして、それを懸念する人々がいました。「取締役に平社員が直接メールするようになったら、どうするんだ!」、「会社への不満をグループウェアに書かかれて共有されたらどうするんだ!」。
しかし、そんなことは起きませんでした。
「取締役にメールするなんて恐れ多い」、「見ず知らずの組織の人に、何か言うだなんてありえない」、「自分の意見を、グループウェアみたいな共有の場で言うなんて・・・」などなど。
ではなぜ、今日、社内ソーシャル時代に、組織を超える、透明になる、などと再び言われるようになったのでしょう?
それは、人の方が変わってきたからだと思うのです。
デジタル・ネイティブとはよく言われますが、子供だけでなく大人も、インターネットのダイナミズムに触れた人であれば、それを会社の中にも求めます。
- mixiやtwitter、facebookで、趣味を同じにする人と出会えて充実した生活が送れるようになった。
- 有識者と直接やりとりできて、刺激を受けた。
- 見知らぬ人だけど、twitterでやり取りして、気付きを得た。
- ブログ書いてたら、出版社の目に止まって本を出した。
- オープンソースプロジェクトで、世界中の見知らぬ人とものづくりを行い、世界中の見知らぬ人に、自分たちの作ったものを使ってもらい、感謝された。
などなど、いろいろあるでしょう。最後のやつは、私自身も経験しました。OpenNTF.orgというところで、GooCalSyncというオープンソースプロジェクトを立ちあげた時の経験です。その時のことは、このブログに綴ってあるので、お時間があれば、御覧ください。
こういった、インターネットのダイナミズムに触れた人々が社内に増えてきて、そこに社内ソーシャルが導入されれば、インターネットで起こったことが社内でも起こります。この現象は、一見、「社内ソーシャルが組織の壁を超えたコラボレーションを実現した」と映るでしょう。でも、裏で働いている力学は違います。
社内ソーシャルを入れただけでは、透明な組織になりません。また、社内ソーシャル推進チームなどが一生懸命浸透させようとしても、そうはなりません。人が変わらなければ、ツールを入れても何も起こりません。それは歴史が証明しています。
しかし、今、人が変わってきています。インターネットが人の行動や考え方を変えてきています。そのように内部変革が起こっている人々が務める企業は、社内ソーシャルを導入することによって、それこそ、イノベーションが起こるというところまでいくかもしれません。
ここまで綴ってきましたが、この考えに至ったのも、知らない人とのtwitterでのやりとりでした。@Paul_ さん、ありがとうございました!
人を進化させてきたインターネット。そのダイナミクスを企業内でも実現する。そのお手伝いを社内ソーシャルが担います。
社内ソーシャルは衰退すると言っている人に知って欲しいたった1つのこと
社内ソーシャルは衰退する、そんなトーンの情報が流れているのが最近目に付きます。ガートナーのハイプカーブでいう幻滅期に入ったということでしょうか。
- 「企業向けコラボレーションツールは時間の無駄」― 実際に利用されているのは Facebook、Twitter
(上記はAvanade社のレポートを5月下旬にjapan.internet.comが報じたエントリでしたが、既に削除されています。英語メディアでのレポートを見つけましたのでこちらを御覧ください。) - They Built It, but Employees Aren’t Coming
- Gartner Says the Vast Majority of Social Collaboration Initiatives Fail Due to Lack of Purpose
- 誰が社内ソーシャルを使うのか
原因の1つは運用・活性化策が足りないということが上げられており、納得できます。これは今、世の中でトライ&エラーを繰り返している状況だと思います。しかし、もう1つとして、社内ソーシャルをtwitterやfacebookのようなつぶやきツールだと思っている節が有り、私はこの点が問題だと考えています。これは、社内ソーシャルウェアをとても狭い範囲でしか捉えていません。2006年頃、社内ブログというのが流行り、そして消えて行きましたが、このままだと、社内ソーシャルウェアは社内ブログの二の舞です。インターネットで起こっているソーシャルのメカニズムを理解し、それを企業内の情報共有や業務に組み込んでいく視点が足りません。
なぜつぶやきだけではだめなのか。それを紐解くのは、昔からの情報共有の「フロー」と「ストック」という考え方です。「フロー」は、新着情報や更新情報などの、今を切り取った情報です。フローの名の通り、流れてきて消えていきます。「ストック」は、それとは反対に溜まっていく情報ですね。今、企業内では、殆どの情報がストック情報でしょう。ファイルサーバーなどはその典型です。
つぶやきはフロー情報です。今までの企業内情報システムにはなかったものです。そのためもてはやされ、「社内ソーシャル=つぶやき」という図式が出来上がっています。東日本大震災でのTwitterの活躍も、その後押しとなっているのでしょう。つぶやきは、ソーシャルの重要な仕組みの内の1つですが、つぶやきが出来ることは限られています。
今、世の中の社内ソーシャルの考え方に足りないのは、ストックです。ストックをソーシャル化して、今までにない効果を上げるアプローチです。例えば、ファイル。ほとんどの企業のナレッジはファイルという形式で蓄積されています。ファイルは、ファイルサーバーに蓄積していますよね。活用できていますか?ゴミ溜めになっていませんか?そもそもファイルサーバーにアップされていますか?作った資料はローカルPCかメールボックスに入ったままになっているんじゃないですか?
ソーシャル化とは、ソーシャルのメカニズムを取り入れることです。ストック情報を活性化させ、もっと情報を吸い上げ、もっとそれを見える化し、もっと有用な情報を広く共有することが可能です。
ソーシャルメカニズムの1つが、「フィードバック」です。皆さんご存知の「いいね!」はフィードバックの1つです。コメントもそうですね。さらに言えば、アクセス記録もフィードバックです。フィードバックは、情報をアップした人のモチベーションを上げ、次もまた良い情報をあげようという気持ちにつながっていきます。情報の吸い上げ効果があるのです。その為、いろいろな形でフィードバックを上げられる仕組みが必要です。(下図)
アップされた情報は他の人から容易に検索できなくてはなりません。そのためのソーシャルメカニズムが「タグ付け」と「ランキング」です。タグで絞込み、いいね数やアクセス数でランキングして、皆が見ている情報、即ち、有用な情報を浮き上がらせることができるのです。(下図)タグ付けについては、「情報の沈殿から共有活性化へ ~ ソーシャルタギング活用法」もどうぞ御覧ください。
見つけた有用な情報は、人のネットワークを通して、加速して全社に、しかし、必要な人だけに共有されていきます。このメカニズムがActivity Streamであり、いいね!です。Activity Streamや、いいね!の情報伝搬効果については以下のプレゼンチャートを御覧ください。
ソーシャルのメカニズムである、「フィードバック」、「タグ付け」、「ランキング」、「アクティビティ・ストリーム」が、ファイル共有などのストック情報に適用されてソーシャル化すると、今までの情報共有がレベルアップするのです。これらはエンドユーザーによるものであり、管理者によるものではありません。故にスケールします。グローバルでコラボレーションするのに有利なのです。
ここまで書いてきたことは、以下のサイトで私がデモ付きで解説しているムービーがありますので、是非、ごらんください。
エンタープライズ・ソーシャルウェアによる新たなワークスタイル
また、CIO特別フォーラムでの私の講演のレコーディングが公開されていますので、お時間ございましたら合わせて御覧ください。
ソーシャルのメカニズムを社内ソーシャルウェアにきちんと実装しているツールは殆どありません。故に、「ソーシャル化」の意味もイメージも、世の中に浸透していかないのも無理はないでしょう。しかしこのままでは、TwitterやFacebook風のツールを安易に企業内に持ち込み、失敗し、結局、「そういや社内ソーシャルってあったね」という状況になってしまいます。エンタープライズ・ソーシャルウェアは、ソーシャルのメカニズムで社員1人ひとりのパワーを活性化する、今までにないパラダイム・シフトを起こすプラットフォームです。それに世の中が気づいて欲しい。
その社内ソーシャルは、ストック情報をソーシャル化できていますか?
行動のハードルを低くする道具
私は、普段、企業ソーシャルを訴求するのに熱のこもったアプローチはあまりしません。イノベーションを起こす、組織の壁を超える、感情の共有、企業変革、などなど。ちょっと遠いところにあるゴールだと思っているので、まずは自組織内だけでも効果の出る部分を最初のゴールとしています。
しかし、やっぱり会社内に変革を起こすというところを目指したい。
IBM永井さんが以下のブログエントリをアップしてします。
「ものごとを変えるのは、強いパッションと、小さな一歩を踏み出す行動力」...かものはしプロジェクト村田早耶香さんに、会社で講演をいただきました。 - 永井孝尚のMM21
この中で以下のメッセージを伝えています。
「ものごとを変えるのは、強いパッションと、小さな一歩を踏み出す行動力」
「まず自分で行動しよう」
「まず自分が情報発信することが大切」
大きなムーブメントも、最初は誰か一人の小さな情報発信なのですよね。その情報発信も、今はエンタープライズ・ソーシャルウェアで行うことができ、ハードルが凄く低くなっています。そして、良いものであれば、エンタープライズ・ソーシャルウェアでのつながりを通して伝搬し、拡散されていく。そんな世界を、永井さんのエントリを拝読し、再度、認識しました。
ムーブメントと言えば、この動画。小さな行動がどんどん広がっていく様がよくわかります。私もセミナーなどではたまに流して見てもらっています。
情報発信しても、自分の考えなんか誰も見ない? そう思いがちですよね。そんな時は、ちきりんさんの以下のエントリです。
最初は少ないかもしれないけど、 情報発信したい人はいるはず。エンタープライズ・ソーシャルウェアは、そういう社員の背中を押す道具。そんな捉え方もあります。