コラボレーション・エンジニアの考える日々

企業での情報共有とコミュニケーションについて、ITを中心に企業コラボレーションを考えていくブログです。

Lotus Notesクライアント戦略とLotus Notes/Domino 8.5.1発表

いよいよLotus Notes/Domino 8.5.1の発表だ。以前も書いたが、この8.5.1というMR(メンテナンスリリース)は、今までのMRとは違う様相を呈しており、沢山の機能拡張を盛り込んでいる。メインは、Lotus NotesクライアントとDesignerに対する拡張だ。このブログでも、いろいろお伝えしていこうと思うが、その前に、今回の拡張を見る上で、IBMのLotus Notesクライアント戦略を整理しておきたい。


以下のチャート。これは2007年にNotes 8.0が出てきたあたりから、IBMがお客様に伝え始めたチャートである。



メールが発達した現在、メールボックス上でいろんな仕事が行われている。それらは大きく、「通知」「ディスカッション」「調整」の3つに分類できるが、それらの仕事は、メールで行うことが必ずしも最適な方法ではない。RSS,SNS,Wiki,Instant Messaging,Twitter,等等、もっと効率的に行えるツールがある。それらのツールをうまく使えれば、メールの洪水から脱出することができるのではないか。しかし、メールは皆が使え、通知性に優れているツールなので、なくならない。ならば、メールと便利ツールは連携すれば、より効率的に仕事は進むはずだ・・・・・と、そういうことを上図は示している。もう随分前からIBMはそう考えていて、2007年にそれを具現化するべく、EclipseベースのNotes 8.0が出てきた。「メールボックスはコラボレーションコンソール」。そんな言い方で、最近、USのガートナー様もレポートを出して、この流れを認めているようだ。


さて、便利ツールと言っても、IBMはLotus Connections, Quickr, Sametimeといったツールを出しているし、インターネット上では日々いろいろなサービスが現れている。これらを使いこなすのは、一般ユーザーにとっては大変だ。



しかし、操作がメールボックスとシームレスに統合されていれば、利用する上での障壁は下がる。メールボックスからいろんな機能を操作するイメージだ。まさに、「メールボックスはコラボレーションコンソール」。これを実現するために、Notesは、Eclipseベースになった。Eclipseであれば、標準ベースでプラグインが容易である。IBMが提供するツールとは密に連携し、日々Web上で生まれるサービスとはアドホックにプラグインできるという以下のようなイメージが、これからのメールクライアントに求められる資質だ。IBMはこういう考えて、Notesの機能拡張を計画している。この戦略越しに8.5.1の発表内容を見ると、より一層、ご理解いただけるのではないかと思う。





Lotusは、メールや掲示板でもなければグループウェアでもない、SNSやマイクロブログでもなければ、Web2.0やEnterprise2.0を提供するのが目的の組織ではない。その事業ドメインは、「人々がより効果的に主体的に革新的に働くのを支援する」というところにある。その意味で、今後Notesはどんどん進化し、今の名前や形は残らないかもしれない。DominoはGoogle Waveベースになることだってあり得る、かもしれない。しかし、その進化において他社と決定的に違うのは、既存資産を継承していくところだ。Notesは、15年以上も前に作られたアプリが最新の8.5上でそのまま動く。こんなシステム、IBMの他にあるだろうか。


ノーツは今年で発売から20年。"Lotus Notes/Domino 20th Anniversary and BEYOND"と題して二十歳のお誕生日会をやるので、ぜひいらしていただきたい。ノーツの最高責任者であるケビンおじさん(カーネルサンダース似)も来る。ノーツの現在過去未来を、8.5.1ネタも交えながら、皆様と語りあえたらと思う。