コラボレーション・エンジニアの考える日々

企業での情報共有とコミュニケーションについて、ITを中心に企業コラボレーションを考えていくブログです。

Notes/Domino 8.5.2は、クラウド対応への布石

先月、Lotus Notes/DominoのSaaS版として、LotusLive Notesが発表・リリースされた。ブラウザーはもちろん、今使っているNotesクライアントから、クラウドにあるメールサーバーにアクセスできる。一方、オンプレミスでは、さらなるIT環境の最適化の流れから、サーバー集約の検討が進んでいる。


クラウド移行やサーバー集約で検討しなければならない最も大事なことの1つは、ネットワークだ。特にクラウドでは、極端な場合、サーバーが地球の反対側に行ってしまう。Notesクライアントの場合、クラサバシステムなので、Webよりもクライアントとサーバー間のやり取り(データ量という意味ではなく、プロトコルレベルのコマンドのやり取り)が多く発生する。これは、物理的にサーバーが遠くに行ってしまったり、ネットワーク帯域が狭い場合に、エンドツーエンドのレスポンスタイムに大きく影響してしまう。


Notes/Dominoの場合、これを回避するために、ローカル複製機能がある。メールやアプリそのものをローカルPC上に持ってきて、定期的にサーバー上と同期させるというものだ。それだけでなく、オフラインでも使えるようになるので、外出先やネットワークの繋がらない場所での会議で力を発揮する。


ところが、エンドユーザーがローカル複製を使うには、ある程度慣れが必要だ。慣れるまでは、情報システム部門は、エンドユーザー向け教育を計画・実施したり、ヘルプデスクへのQ&A増加を見込んて対応策を検討しなければならない。そうしたとしても、エンドユーザーがローカル複製を必ず使ってくれる保証はなく、サーバー集約やクラウド移行後に、パフォーマンスが遅くなったとクレームを沢山もらう可能性は否定できない。


これを解決すべく、Notes/Domino 8.5.2から「管理対象レプリカ」という機能が追加された。一言でいえば、「エンドユーザーに確実にメールをローカル複製で使ってもらえる機能」だ。エンドユーザーは、サーバーとかローカルとか意識すること無く、オンライン/オフライン関係なく、いつでもどこでもメールにアクセスできるようになる。ローカルアクセスなので、パフォーマンスも今よりぐんと上がる。


「確実にメールをローカル複製で使ってもらえる」とは、以下のような動作をするので、そう表現した。

  • クライアントにローカルレプリカが無ければ、自動的につくってくれる。(デスクトップポリシーで設定)
  • レプリケーターベージにメールDB複製のエントリーが追加されるが、これは削除不可能。エンドユーザーに間違って削除されることはない。
  • ローカルレプリカのファイルをOSレベルで削除しても、Notesクライアントの次回再起動時に自動的にまた作成される。エンドユーザーが間違って削除しても大丈夫。削除されている状態で、ローカルレプリカのアイコンをクリックすると、サーバー上のDBを開いてくれる。
  • メール受信は、ほぼリアルタイムで複製してくれる。僕がテストしている範囲でいうと、最大でも1分程度。これは、通常の複製ではなく、受信メールのみの複製。Notesクライアントがメール受信をポーリングしていて、新規メールを発見すると、取ってきてくれる動きをする。
  • メール送信は、リアルタイムで送信。
  • サーバー上のDBアイコンをクリックしても、ローカルDBが開く。今までローカル複製を使ってこなかったエンドユーザーには、メールDBアイコンがサーバー用とローカル用の2つが出来て、ついつい、いつもどおりにサーバー上のメールDBアイコンをクリックしがちだ。そうすると、サーバー集約、クラウド移行後は、パフォーマンスが遅くなったと言われる可能性がある。しかし、こういう動作をするので、確実にローカルレプリカを使ってもらえる。(因みに、ブックマークからサーバー上のアイコンをむりやり選択して開けば、サーバー上のDBが開く)

この機能は、クライアント側の機能なので、サーバーが8.5.2でなくても構わない。本日、8.5.2日本語版がリリースされているので、是非、インストールして試して欲しい。管理対象レプリカ機能は、クライアントのnotes.iniに以下のパラメータを入れることで、ポリシーを使わなくても機能してくれる。
CacheMail=7
ReplicateOnNewMail=1
OutgoingMailSendThreshold=1


Notes/Domino 8.5.2 と LotusLive Notesの発表、リリースが重なっているのは、偶然ではない。8.5.2はクラウドを志向している、そんなリリースなのだ。


P.S
昨日のLotus Technical Update Workshopでは、アンケートに、ブログ更新しないんですか?というコメントを頂戴した。忙しさにかまけて更新を怠っていたが、見てくれる人がいるのであれば、また更新していこう。