コラボレーション・エンジニアの考える日々

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IBM Project Vulcan とは

このブログで度々"IBM Project Vulcan"について言及しているが、そもそもVulcanって何なのか、以下にまとめてみた。ここに書いたことは、日頃、僕がお客様に説明している内容だ。尚、Vulcanについては、Vulcanに最も詳しい同僚の森谷さんのブログエントリ "Lotusphere 2010 : Project Vulcanについて"で書かれているので、合わせて見ていただきたい。Lotusphere 2011後は、いろんな内容が出てくると思うが、IBM Project Vulcan と照らし合わせて見て頂けると、IBM の意図が良くわかると思うので、是非、注目していただきたい。


■IBM Project Vulcanとは
これは、今後のLotus製品の機能拡張に対するIBMのビジョンを示したものだ。


今までお客様から、「ノーツは今後どうなっていくのか?」、「ノーツはなくなっちゃうの?」、というようなご質問を頂くことが多かった。それらに対して個別にお答えしてきたのだが、IBMとして広く明言してはこなかった。それが、Lotus製品全体の将来に対するお客様の不安につながっていた。


そこで、2010年のLotusphereで、最高責任者の Allistair Rennie の口から、「今後の10年を見据えて、こう考えて開発していきます」と宣言したのが、"IBM Project Vulcan" だ。


"IBM Project Vulcan"と言うと、開発前製品のコードネームのように思われるかもしれないが、そうではない。上に述べたように、開発ビジョンだ。インターネット上では、"Vulcanの考え方が製品として実現されたらこういう感じになりますよ"というモックアップの画面や動画が出回っているのだが、それはパッと見、TwitterやFacebookのような画面に見えるので、「IBMは企業内Twitterを今後作る」と誤解されているケースもある。企業内Twitterなら、もうとっくにリリースしている。


■4つのビジョン
IBM Project Vulcanは、4つの切り口で説明される。以下、それぞれ述べていきたい。


Continuity (継続)
今後の新たな機能は、既存の製品の延長線上に提供されていく。基本的には、まったく新しい製品がでてくるということではなく、機能拡張によって実装されていくということだ。お客様に、新たな製品を導入していただくのではなく、今お使いのLotus製品をバージョンアップしていくことで、自然と革新的な機能を使っていただけるようになることを目指している。


また、機能拡張の際には、既存アプリケーション資産(プログラム、データ)の互換性を最大限に考慮しながら拡張する。世の中には、スクラップ&ビルドの文化をもった有名ソフトウェア会社もあるが、そういう会社とは明確に一線を引いている。ノーツは、15年前のR3のアプリが、Eclipseベースに大きくアーキテクチャーを変えた8.5の上でも動く。また、IBMという会社は、未だに一部のお客様でOS/2のサポートを続けているような会社だ。これらを見ていただければ、"Continuity" の信ぴょう性を感じていただけるだろうか。


資産は、アプリケーションだけではない。開発スキルもそうだ。@関数やLotusScriptといったものは、将来バージョンでも使えるように考えられている。


Convergence (統合)
世の中には、様々なコラボレーションソリューションがある。Lotus製品もまた、リアルタイムコラボレーションのLotus Sametime、企業SNSのLotus Connectionsなど、10種類以上の製品を提供している。メールだけでコラボレーションする時代は既に終わっており、メール以外のこういったツールを使ってより効率的に快適にビジネスを進めていくというのが今後の方向性だ。


ただ、沢山のツールをエンドユーザーに使い分けていただくというのは、現実的には厳しい。


そこでIBMが考えているのは、いろんなツールを統合(Convergence)して提供するという方向性だ。統合といっても、1つの画面にフレームを切って表示するというレベルのものではない。もっと粒度が細かく、個々の機能が1つのUIに埋めこまれていて、ユーザーは自然とリアルタイムコラボレーションや SNS の機能でコラボレーションできるという世界だ。


Convergenceは、UIの話だけではない。クラウドとオンプレミスの統合であったり、デスクトップ、ブラウザ、モバイルのユーザーエクスペリエンスの統合も考えられている。


Innovation (革新)
Continuity と Convergence だけでは、10年後もあまり変わらないような印象を受けるかもしれないが、そうではない。今までにない革新的な機能を実装することも含まれている。今のところ見えているのは、Social Network Analytics の活用だ。実際、Lotus Connections 3.0では、すでに Vulcan の目指すところが実装されはじめている。IBM Center for Social Software のサイトを見ると、IBMが次に実装しようとしているソーシャル機能が垣間見える。このセンターは、お客様や大学教授、学生と共に、企業に生かせるソーシャルソフトウェアの研究を行っているIBM研究所の1つだ。


またInnovationには、Business Analytics との連携も含まれてくるのかもしれない。


New Opportunities (機会)
New Opportunitiesは、「製品のAPIをどんどん公開していきます」という宣言だ。このAPIを使って、お客様やパートナー様に独自ソリューションを開発してもらって、Lotus製品の回りにエコシステムを作ろうということである。Convergence で謳っている統合の実装としての意味もあるのだろう。




Lotusphere 2011 のセッションアジェンダを見ると、IBM Project Vulcan の考え方に沿ったより具体的な製品の姿やAPIなどが話されるようだ。僕は残念ながら現地には行かず、日本でお留守番だ。日本のお客様・パートナー様へのフィードバックは、東京3/2(水)、大阪3/8(火)で実施する Lotusphere Comes To You 2011 で行われるだろう。是非、会場に足を運んでいただけたらと思う。


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