コラボレーション・エンジニアの考える日々

企業での情報共有とコミュニケーションについて、ITを中心に企業コラボレーションを考えていくブログです。

会社を変える個人のモチベーション活性化

こんな実験結果がある。


イスラエルの10の保育園で、親が時間通りにお迎えに来なくて遅刻した場合、罰金を課すことにした。すると、遅刻がなくなるどころか、増えたというのだ。「罰金を払えば遅刻してもいい」というように親が考えてしまったということらしい。さらに面白いのは、罰金制度をやめたあとも、一旦増えた遅刻は、元に戻らなかったこと。


今まで親の自主性に任せて運営していた文化が、罰金制度によって、壊されてしまった。壊された文化は、なかなか復元できない。


もう一つの例。


ケニアでの大統領選挙の時、いろいろ問題のある選挙で、各地で多くの暴動が起きた。政府は報道統制を敷き、その暴動の状況を国民に知らせようとしなかった。そこで、ある弁護士がブログで各地の暴動の状況を発信し始めた。


ところが、その弁護士に集まってくる暴動情報は膨大な数で、一人ではとてもさばききれない量だった。


そこで2人のプログラマーが名乗り出て、メールやSMSで送られてきた暴動情報を自動集計して地図上にマッピングする"Ushahidi"というシステムを作った。わずか72時間後に出来たそのシステムは、必要十分な機能を持ち、非常に活躍した。その後、Ushahidiはオープンソース化され、全世界で活用されるようになった。




上記の実験、実例は、TEDの"クレイ・シャーキー 「思考の余剰が世界を変える」"で、語られている。


この2つを会社内に当てはめて、コラボレーション領域に拡張して考えてみる。


ナレッジマネジメントでは、社員にいかに情報を吐き出させるかが問題だ。その為、人事評価と連動させたり、表彰制度を導入したりするのだが今一うまくいかない。これは罰金の逆の報酬だが、根本的には契約によって個人の行動を促すという方法には変わらない。保育園の例と同じだ。個人のモチベーションをいかに活性化させるかという視点でもっと深く考察する必要があるだろう。


その為の1つの解決策が、社内ソーシャルウェアかもしれない。自分の登録した情報やファイルが、他の人から高く評価されてコメントをもらえたり、ダウンロード回数が多かったり、Facebookのように"いいね!"が沢山付いたりしたら、次も良いコンテンツを登録しようかという気になる。これは罰金や報酬で行動を促すのとはまったく違うモチベーションの活性化だ。


話を変えて、業務改革を考えてみる。業務改革というと大げさかもしれないので、日々の仕事の改善でもいい。仕事の効率化や改善にはITシステムによる支援が効果的だ。しかし、一人のエンドユーザーが改善案を持っていたとしても、それがシステムとして具現化するには、とても多くの社内プロセスを通す必要がある。


それを解決するのが、エンドユーザーコンピューティングになるかもしれない。ノーツは昔からRapid Application Developmentで高い評価をうけてきたシステムだし、最近では、マッシュアップやコンポジットなども、ソリューションとして挙げられる。Ushahidiが72時間で構築可能だったのは、最近のWebの技術革新があってのことだ。使える道具と環境さえ与えられれば、開発者は自らのモチベーションで業務改革を行う。ガバナンスを効かせるというのも重要だが、モチベーションとのバランスも考えたいところだ。




・・・・・というところで、結論はないのだけれど、エンドユーザーにしろ開発者にしろ、個人のモチベーションを活かすようにどうデザインしていくか、コラボレーションシステムがどう貢献できるのか、という点で今後も考えていきたい。