コラボレーション・エンジニアの考える日々

企業での情報共有とコミュニケーションについて、ITを中心に企業コラボレーションを考えていくブログです。

人の質問になど答えている暇はない 〜 大久保寛司氏講演からの気づき

僕は、お客様に企業内ソーシャルウェアの事をよくお話にお伺いします。IT部門の担当者の方、何々部長、CIO、CEO等、お話する相手は様々です。その時にほとんどの場合にお伺いするのが、「ソーシャルの良さは分かった。でもそれは理想論。うちの社員は情報など出さない。自分の仕事で手一杯で、人の質問になど答えている暇はない。」という内容です。それを聞く度に、なんか悲しくなって、あまりいい事も言えず、すごすごと帰ってきてしまいます。


そんな中、昨日、大久保寛司氏の講演を社内で聴講する機会がありました。大久保さんは、それはそれは多くの企業、公共、団体で人と経営についてお話されている方です。ちょっと検索していただければ分かりますが、とても評判になっています。ちなみにIBM出身者です。


講演の中で、伊那食品工業、ネッツトヨタ南国、菓匠Shimizuなどの例を出しながら、凄い企業が何を考えているのか、ある種、感動を伴うお話をされます。共通しているのは、それらの社員は、みんなお客様の方を向き、社員同士助けあいをしていることです。そこに組織の壁などというのはなく、「組織の壁ってなんですか?」と大久保さんは逆に聞かれてしまうそうです。大久保さんは言います。「組織の壁があるのは、自分の部門しか見ていない証拠。お客様を見ていない。部門からの指示だけで働いていてもつまらない。」


ソーシャルで組織の壁を超えたコミュニケーションなどと、僕は良く言っていますが、そんな話がお客様に響くはずがありません。上から落ちてきた仕事をこなすのに手一杯な仕事環境では、自分のことしかどうしても見えなくなり、他の社員、他部門のことに関わっている余裕などないでしょう。


しかし、IBM社内で起こっていることは違うんです。マイクロブログでなにげなくつぶやいた疑問や質問に、誰かが答えています。それも特定の人だけが答えるのではありません。もちろん、IBM社員は猛烈に働きますので、それこそ外から見たら「人の質問になど答えている暇はない」ということになります。でも、反応する人がいる。


これはIBMだから出来ていることではないと僕は思っています。そこに困っている人がいるのを見てしまって、その答えを自分が持っているとしたら、いくら忙しくても、コメントを書いてしまう。それが人間なんじゃないかと思うのです。ネット上だとあまりそうは思わないかもしれませんが、同じ職場ですぐ後ろで知っている人が声を出して「あぁこれよくわからないなぁ」と言っていて、それが自分が知っていることだとしたら、誰が黙ってPCに向かって仕事を続けるでしょうか。また、答えをかけなくても、「大変だね。がんばれ!」とか言われると、なんかがんばろうと思う。大久保さんは、「ちょっとした声掛けが大事。孤立が最悪。」とおっしゃっていました。


大きな組織では、人と人は離れて働きます。グローバル化や在宅勤務などが進めば、さらにコミュニケーションは薄くなります。そこを、社員が思っていること、持っている情報を出して可視化するのが、ソーシャルウェアの1つの役割だと思います。可視化できれば、人は反応します。大部屋でみんなでワイワイ一体になって働く感覚を取り戻すのです。ただ、ソーシャルウェアは単なるツールなので、ツールを導入しただけでは何も変わりません。しかし、ちょっと背中を押すことをすれば、ボトムアップで変わっていく可能性があると思います。日本企業の社員の人間力を信じたいです。もちろん、トップダウンのアプローチは必須です。大久保さんのお話に出てくる会社は、どこも社員教育にものすごく力を入れています。組織文化改革を進め、自ら動くようになった社員に強力な武器となるのがソーシャルウェアです。




大久保さんの話は、1時間半に及び、ここに書いたのはそのうちのほんの1握りです。できれば直接講演を聞く、機会がなければネットや本などで話を読むことをお勧めします。特に、営業組織のマネージャーの方々には強くお勧めします。


最後に1つ。大久保さんは、「笑顔が会社を変える」とおっしゃっていました。社内ソーシャルウェアのプロフィール写真にはぜひ笑顔で撮った写真をアップしましょう!