コラボレーション・エンジニアの考える日々

企業での情報共有とコミュニケーションについて、ITを中心に企業コラボレーションを考えていくブログです。

Notes20歳、愛されるプロダクトの条件

昨日、無事、Notes20歳誕生日イベントが終わった。200名以上のお客様、パートナー様にご来場いただけて、Notesは本当に皆に愛されている製品なんだなぁと改めて思うのであった。僕が思うに、愛されるプロダクトの条件というのは、2つある。1つは、ユニーク性。もう1つは、使いやすさ。


僕は今までのキャリアの前半をAS/400(IBM i、とか、iSeriesとか、名前はよく変わる)のエンジニアとして過ごした。このAS/400というのも、ロイヤリティの非常に高いお客様に愛されるプロダクトであり、毎年、AS/400中心のiSUCという大会で多くのお客様にお集まりいただいている。AS/400も、ユニーク性と使いやすさを持っている。


AS/400は、IBM内で数人の優秀なエンジニアが自主的に集まって、革新的なアーキテクチャーをつくり、生まれた製品である。NotesがRay Ozzieと数人のエンジニアがいいものを作ろうと集まって出来たのと似ている。


AS/400のユニーク性は、完全に独立性を保っているソフトウェアレイヤーにある。故に、大昔作ったアプリケーションが最新のH/W,OS上で稼動する。特に、ハードウェアに近いマイクロコードというレイヤーが秀逸だ。マイクロコードは同じものを2つ持つことが出来て、パッチを適用するときは、まずどちらかに適用して、問題があったらすぐ適用していない方を使って稼動させるということができる。Notesも、Notes Object Service(NOS)というレイヤーを持っていて、NOSがOSの違いを吸収する役割を持つ。また、データベースの構造は、ディスク上の構造(いわゆるOn Disk Structure、ODSだ)とメモリー上の構造(ODSと比して、In Memory Structureという)を分けて考えられており、これもプラットフォームの違いを吸収する。これらがあって、Notesも大昔のバージョンで作られたアプリが、基本的には最新のバージョンで動く。


AS/400の使いやすさは、"Ease of Use"といって、設計思想として取り込まれている。コンテキストヘルプなど、今は当たり前かもしれないが、それが数十年前から実装されている。また、エラー発生時のエラーメッセージがすごい。なにがすごいって、書いてあるままを信用できるのだ。PCでのエラーメッセージは、額面どおりに受け取っていては問題判別は出来ない。ところがAS/400の場合は、エラーメッセージをそのままの内容で受け取って、問題判別すれば、大概の問題の原因は特定され、解決する。システム運用者にとっては大助かりだ。また、All in Oneという設計であり、RDBMSからトランザクションシステムまで、なんでもかんでもOS/400が提供する。All in Oneだからシステム構成をシンプルにできる。これも、Notes/Dominoと同じだ。


ユニーク性と使いやすさは、Apple製品にも共通であろう。そして、Notes、AS/400、Apple共に、熱狂的なファン、信者といってもいい、がいることも共通だ。



世の中は、オープン化が加速して製品の独自性が薄まり、クラウドの登場によって、製品そのものの存在が隠蔽される方向にある。Lotus Notes/Dominoも、今後、さらにオープン化、クラウド化していくだろう。その中にあって、尚、ユニーク性と使いやすさを維持しながら、Lotus Notes/Dominoは進化していく。10年後、どんな姿になっているか楽しみだ。愛されるプロダクトでいつづけているだろうか。愛されるサービス、と言い換えるべきか。ただ、意外に姿、形、つまりユーザーインターフェースは変わらないのかもしれない。AS/400はGUI化されているが、未だにグリーンスクリーン(CUI画面)が使われているし、Notes 20周年の会場で、Notes V1.0の姿を見たが、今の原型がすでにそこにあった。変化の激しいIT業界において、そんなに簡単には変わらないものもある、ということなのかもしれない。