コラボレーション・エンジニアの考える日々

企業での情報共有とコミュニケーションについて、ITを中心に企業コラボレーションを考えていくブログです。

IBM社内で実際にやっているソーシャル製品開発ユースケース

企業ソーシャルウェアのIBM Connectionsは、アイデアをアップして、他の人に投票してもらう「アイデアブログ」と言う機能があります。
こんな感じです↓

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この機能、IBM社内で実際にLotus製品の開発で使っており、新機能の実装を決めるのに利用しています。これについて、うちの部で守護神と呼ばれている人がUSの開発者と話したことがあります。その内容を教えてもらったので、以下に掲載いたします。

  • 従来はプロダクトマネージャーが全世界を実際に渡り歩いて、お客様の声を聞くという活動を行っていました。しかしながら、非効率で時間がかかることや、偏った調査になってしまう問題がありました。
  • また、開発部門は密室作業な側面があり、お客様の悩みや細かな配慮まで至らない課題もありました。そのため、上記活動に同行するようなことを行っていました。
  • 最近は、広く社内からConnectionsを通じて、意見やアイディア創出を募って反映しています。以下のようないろいろなメリットがあります。
  • ニーズが高いものを数値データとして収集できる。
  • 投票数が少なくても潜在的ニーズも拾え、製品企画の段階で検討の俎上に乗せられる。
  • 開発視点では得られない様々な情報が得られる。かなり突拍子もない意見も出てくる。開発部門は市場から離れていて問題点をある程度解消できる。
  • 長期間オープンにしておくことで、ある程度精度の高いデータが得られる。インタビューなどでいきなり問われても、思い出す範囲でしか答えられないので、どうしても普段からかなり注意を払っておくか、よほど不満に思っていることしか上がってこない。その点、長期間のオープンは精度向上に寄与している。
  • 単純な「こういった機能が欲しい」という情報のみならず、ユーザーの使い方やデザイン上の問題が上がってくる。背景が分かることでコンテキストにあった開発が可能になる。
  • 長期的な開発ロードマップへの反映がよりやりやすくなる。「今できなくても、希望の機能はこの時期に実装を考えている」といった説明ができるようになる。
  • 検討したけど、ボツないしは不可能と判断されたものでも、それはそれで明示することで、投稿者ならびに関係者に意思表明ができる。「意見だしたけど、握りつぶされた。(だから、もう意見出すのは止めよう)」といった感覚が減り良いスパイラルに入る。


私も、今、IBM Connectionsに足りない、ある機能を投稿していて、他の沢山の人が投票して、実際に次のメンテナンスリリースで実装される計画になっています。このユースケースは、いろいろなところに適用できると思います。

ソーシャルは、つぶやきだけではありません。こんな機能もソーシャルです。

Facebookの独自検索エンジン「Graph Search」の企業向けサービスを考える

GIZMODOに、”Facebook、Googleに宣戦布告! 独自検索エンジン「Graph Search」を開発” というエントリがアップされています。Facebookがソーシャルグラフを利用した新しい検索エンジンを提供するという話です。

 

気になる部分を以下に引用します。

でも今日発表された検索エンジンのモンスターは、友達を探す手段にとどまらず、さらにGoogle検索の代替以上のものにもなっています。自分が関心を持つすべての情報をソーシャルライフの文脈に引き寄せ、自分に近い人の間で話題になっていることを優先し、ただインターネットで人気があるだけの検索結果ははじいてくれます

 

この検索機能、企業内にも入ってくる匂いがプンプンします。コンシューマライゼーションというやつでしょうか。自分のソーシャルグラフを使って、全社から検索した結果をフィルタリングしてくれて、自分に関係のある可能性の高いものを検索結果として返してくれるようになることが想像できます。

 

企業内で、皆がソーシャルウェア上にコンテンツを置くようになり、ソーシャルウェアにこの機能が実装されると、ちょうど、自分の同僚のPCを横断的に検索してくれるようなイメージが出てきます。効率的な検索が出来て、便利そうですよね。

 

IBM Connectionsはどうかというと、今は、ソーシャルグラフをレコメンデーションに応用しています。「あなたにはこのファイルが必要ですよ」と教えてくれます。言ってみれば、これはソーシャルグラフを利用した新しい情報のPUSHの形です。FacebookのGraph Searchは、ソーシャルグラフを利用した新しい情報のPULLの形と言ってもいいでしょう。

 

現在のIBM Connectionsの検索画面は以下のようになっています。

 

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将来、「Graph Search」が実装されると、赤枠でくくった選択肢に、"マイネットワーク内のコンテンツを検索" だなんて項目が増えてくるのかもしれませんね。

 

Notesアプリがソーシャル化すると、こうなる!

 YouTubeで以下のビデオが公開されています。Notesで作られた社内IT障害受付Webシステムで発行された1つのトラブルチケットが、Connections、Notes、iNotesと連携してシームレスに処理されていく様が分かります。


OpenSocial in IBM Connections, Notes and iNotes

 

デモストーリーは以下の流れになっています。

  1. プリンタの不具合に困ったフランクが、トラブル管理Webシステム(XPagesアプリ)に入力してチケットを発行します。デモ上、対応者としてサマンサをアサインします。
  2. サマンサのIBM Connections上のActivity Stream (タイムライン)には、フランクからトラブルチケットが発行されたことが確認できます。そのタイムラインエントリーのプレビュー画面で内容を確認し、そこかトラブル管理Webシステムに直接、「すぐに対応します」とコメントを入力します。
  3. サマンサは、IBM Connections上からメールを見て、同じようにトラブルチケットのメールが来ているのを見ます。メールからもトラブル管理Webシステムにコメントして、「紙は入れてありますか?」と入力します。
  4. サマンサは、Notesクライアントでメールを開き、トラブルチケットのメールが来ているのを見つけ、メールのプレビューから「電源は入っていますか?」とコメントを入れます。
  5. フランクは、トラブル管理Webシステム上でサマンサからのガイドを見て、対応結果を入力。「電源が入っていませんでした・・・」
  6. サマンサは、iNotesでメールを開き、トラブルチケットのメールからフランクの対応コメントを確認し、このトラブルチケットをクローズします。

 

プレビュー画面からシームレスに処理できるのは、OpenSocialというウィジェットの仕組みを使っているからです。IBM Notes/iNotes 9.0 Social Editionでは、このOpenSocialに対応したのが一番の売りです。OpenSocialウィジェットはオープンな仕様なので、XPagesでなくても、他社アプリケーションとの連携が可能です。SAPのワークフローの承認通知を受けて、Connections上、Notes/iNotes上で直接承認処理を行うといった感じです。

 

このデモアプリケーション、今月末のIBM Connect 2013の中のBreakout Sessionで解説されるようです。私は今年は行きませんが、行かれる方は是非見に行ってみて下さい。

 

ブログをお引越ししました。

2006年からはてなダイアリーでブログを綴ってきました。はてなでは、新しいブログサービスとして、はてなブログを作り、そろそろ正式リリースされるようです。はてなは今後、はてなブログの方を主力ブログサービスとして拡張していくということですので、はてなダイアリーからはてなブログにお引越ししました。

 

URLも変わるし、アクセスカウンターもリセットされます。Googleからの過去記事検索もどうなるか分かりませんが、古くなっていくサービスにしがみつくより、これから進化していくサービスに行きます。

 

ちょうど年も変わりました。ここ数年、平均すると月に3本程度のエントリーしか書けていないので、心改めるのに良いタイミングでもあります。もうちょっとまじめにセルフ・ブランディングを考えなきゃなと思っていたときに、イケダハヤトさんお勧めのブログ運営本を読んだのに影響され、ついでに独自ドメインも取りました。お引越しするとURLも変わりますから、これもちょうど良いタイミングです。

 

みなさま、今後ともどうぞよろしくお願いします。

 

必ず結果が出るブログ運営テクニック100 プロ・ブロガーが教える“俺メディア”の極意

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ソーシャルとタレント・マネージメントとの幸せな関係

IBMがKenexaという会社の買収を完了しました。Kenexaは、向こうの人は"ケネクサ"と発音しています。なんと、買収金額は13億ドルです。Lotusを35億ドルで買収したことを考えると、その4割弱の金額であり、IBMとしてはかなりの投資を行ったと考えられます。一体、Kenexaとは何なのでしょうか。なぜIBMはこんなに投資するのでしょうか。


■タレント・マネージメントという世界
タレント・マネージメントという言葉を聞いたことがあるでしょうか。日本では人材管理と訳されることもあります。昔から企業経営には”人・物・金”が大事とよく言われますが、タレント・マネージメントは、その”人”を対象にしたソリューションです。そうなると、昔ながらの話かと思いきや、2012年のCEO Studyを見ると、企業の経済価値を維持するための一番大事な要素として、人材が挙げられています。ツールベンダーが言っているのではなく、世の中の経営者が、今まさに挙げている課題なのです。



なぜ今、改めて人材管理なのか?端的に言うと、それは、人材の流動化が激しくなってきているからです。今、US企業の離職率は年間15%と言われています。そして、抜けた人材の穴を埋めるのにかかるコストは、 SHRMの2011年のレポートによると、年収の200%となっています。とてもコストがかかりますね。それも、流動するのは優秀な人材でしょうから、すぐに穴を埋めるのは容易ではありません。売上の80%を上位20%の営業が稼ぎ出している、プログラムコードの80%が優秀な20%のプログラマーによって書かれている、などとよく言われるように、抜けた穴は早急に埋めなければなりません。そもそも、抜けないようにしなければなりません。


日本にいる私の肌感覚としても、IT企業ではとくに流動が激しくなっているなと感じます。LinkedInの厚盛の影響が大きいのでしょう。私はもう44才ですが、LinkedInを見て私にコンタクトするヘッドハンターは多いです。回りの同僚を見ても、優秀な人であればあるほど、その傾向は強いです。ヘッドハンターから魅力的な条件を出されたら、いくら終身雇用が当たり前という時代に入社した人でも、より自分が活躍できて、より収入が得られる環境に行ってみようかと思っても不思議ではありません。


ということで、このタレント・マネージメントという世界、市場規模は現在40億ドルから60億ドルと言われています。Oracle社はTaleoというソリューションを買いました。SAP社はSuccessFactorsという買い物をしました。そしてIBMはKenexaを買収したのです。Capterra社の調査では、Kenexaはこのエリアで知名度No1になっています。


■Kenexaが提供するタレント・マネージメントとは
タレント・マネージメントは、企業における人材管理。ソフトを導入すればいいってものではありません。そのため、Kenexaは以下のようなコンサルティングサービスをもっています。

  • Recruitment process outsourcing
  • HCM Service
  • Behavioral science
  • Implementation

一番目のRPOは、日本では”採用代行”だなどど訳されているようです。”採用代行”で検索してみると、結構な数のサイトがヒットします。タレント・マネージメントは、海の向こうの話ではなく、日本でも起こっているのです。
3番目のBehavioral scienceは"行動科学"と訳されます。最近、ゲーミフィケーションという文脈で、如何に社員にモチベーション高く仕事してもらうかということが議論されますが、それに近いのではないかと思います。


そして、ソフトウェア機能です。KenexaはSaaS型で提供するクラウドサービスです。以下の機能を提供します。

  • Recruiting
  • Onboarding
  • Learning
  • Performance Management
  • Assessments
  • Compensation
  • Surveys

なんと、人の採用などというところから始まって、新人研修、日々の学習、業務目標管理、目標達成管理、報酬管理、社員満足度調査まで行えるという、すごく包括的なソリューションです。IBMらしいですね。


■IBMソリューションとの融合
Kenexaは、人を管理するシステムとサービスです。ソーシャルも人を中心として考えられているシステムです。この2つのシステムの相性が悪いはずがありません。ソーシャルと融合することで、スキル保有者をすぐ見つけてプロジェクトチーム編成する、オンライン学習を媒介にしてつながった社員間でOJTを通して学習スピードを向上させる、ソーシャルのつながり上で業務目標を可視化してダイナミックにサポートを得たりサポートをしたりして行動をスピードアップする、ソーシャル上で業務達成状況を可視化してモチベーションを喚起する、などといったことが期待されます。


ビジネス・プロセス・マネージメントと連携すれば、バリューチェーンの各フェーズと連携して、目標設定->学習->実行->達成->レビューということが可能となり、ボトルネックとなっているプロセスの人に依存した原因究明や、プロセス自体のスピードアップにもつながるでしょう。さらにアナリティクスと融合すれば、ビジネス・プロセス・マネージメント上でのワークフロー上で、社員が判断を早く・正確に行えるようになるでしょう。




企業内ソーシャルウェアは、イノベーションを生み出す!、組織を超えたコラボレーション!などという獏としたものから、実利的なものへ移行しつつあります。その内の大きな1つがタレント・マネージメントとの連携です。ソーシャルは人を中心に考えられたやわらかいシステムであり、タレント・マネージメントはそれに比較するときっちり管理するかたいシステム。その両者が融合されることによって、どんな新しい世界が実現できるのか、これから楽しみです。その世界は、来年1月の最終週に行われるIBM Connect 2013で明らかにされることでしょう。

企業内ソーシャルウェアの活性化ロードマップ

「社内ソーシャルって何がいいの?」と言われた時、僕はいつも以下の3つのことを話しています。

  1. 情報発信が推進される
  2. 発信された沢山の情報がタグにより検索しやすくなる(情報のPull)
  3. 良い情報・重要な情報が、つながりを通して広まる(情報のPush)

1番の「情報発信が推進される」というところがベースになっているわけですが、お話をさせていただくと、大体「うちはそんな文化じゃない」、「情報はみんな抱え込んでいる。個人商店でやっている」、「情報をオープンにするのはセキュリティ上難しい」、というご意見をいただきます。社内の誰かが作った資料を別の誰かが必要としていたり、様々な部署からの情報・意見を取り入れるのが新しいアイデア発想には必要だとか、社員の総力を結集するのだ!とか、いろんな課題点・やりたいことを皆さんお持ちですが、ポイントは個々の社員の情報発信になります。でも、文化だとかセキュリティだとかが壁と感じられて、なかなか前に進めない・・・。


そんな時、以下の情報発信のロードマップという話をしています。



ソーシャルウェアの導入で目指すところは、右上6番です。みんながモチベーションされて、全社に向かって情報発信して共有されていく世界。ソーシャルの話をお聞きになるとき、皆さん大体こういった筋の話を耳にされることが多いと思います。しかし、いきなり6番を実現しようとしてもなかなか出来るものではありません。


そこで左下の1番から始めるのです。課題点の中で一番多いのは、情報公開範囲としてのセキュリティの問題ですが、セキュアなコミュニティの中で、情報発信を行います。そして、ソーシャル的なフィードバックによるモチベーションというよりも、従来のメールやファイルサーバーなんかよりも、全然便利だというところを実感してもらいます。


そして次は3番です。複数のチームや組織で使っていきます。従来のグループウェアだとこの部分が難しいのですが、ソーシャルウェアだと今までにない形で出来ます。例えばファイル共有。ひどいところだと、メールでファイルを添付して、それが転送、転送、転送されていきます。バージョン管理やコメント管理など、全くありません。グループウェアだとしても、組織間、チーム間でファイルを共有しようとすると、ファイルをコピーして共有しなければなりません。ソーシャルウェアでは、以下のようになります。



ファイルを共有されたユーザーは、さらに他のユーザーやコミュニティに共有することが可能です。その時、ファイルの実態は1つだけです。コメント、いいね数、ダウンロード数などのメタ情報も引き継がれます。ファイルが更新されれば、共有されたユーザーに通知が届きますので、常に最新バージョンのファイルで作業が可能です。これにより、1つのファイルを、必要な人にセキュアに柔軟に、組織やチームを超えて共有範囲を広げていくことが出来るのです。ちょうど、神経ネットワークのように共有が広がることから、"オーガニック・ファイルシェアリング"だなんて言い方もあります。


つぶやきに関しては、自分が参加する複数のコミュニティでつぶやかれた情報は、自分のタイムラインに集約されて入ってきますので、個々のコミュニティをそれぞれアクセスして確認する必要はありません。以下にイメージ図を載せておきます。




どうでしょうか。1番、3番から入っていて、2番、4番のソーシャル的なモチベーション喚起を経験しつつ、6番を目指すというロードマップです。
ソーシャルは、個人の能力を活かして活性化させるという新しいアプローチですので、定着には時間がかかると思います。いきなり理想形を目指すのではなく、まずは分かりやすく従来の情報共有を延長させる方向で推進し、徐々にソーシャル的なアプローチによる効果を狙っていきます。「とりあえずやってみよう」では失敗します。ソーシャルウェア展開には、自社に合ったロードマップを考えていきたいですね。


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本気で考える脱メール

明日2012年12月12日は、グローバルで"No Email Day"ということになっています。ということで、僕が今年の11月9日にiSUCというIBMのユーザー会のイベントで講演したチャートを公開用に編集して共有します。プレゼンでは、デモをかなり交えながら行ったので、今一伝わらないかもしれないですが。。。



皆さんも明日は丸一日、メールを使わずに仕事してみませんか?