コラボレーション・エンジニアの考える日々

企業での情報共有とコミュニケーションについて、ITを中心に企業コラボレーションを考えていくブログです。

情報の沈殿から共有活性化へ ~ ソーシャルタギング活用法

ソーシャルウェアのご進講や、活性化の話を良く行なっています。その中のキーポイントの1つとして、タグ付けの話をします。ソーシャル・タギングです。すると、ほぼ毎回、以下の反応を頂きます。

  • 「分かったけど、本当に運用回るかな?」
  • 「導入試験中だけど、なかなかタグを付けてくれない。」
  • 「タグはパワーユーザーのものじゃないの?」

タグ付けは、企業内情報共有のパラダイム・シフトです。今まで管理者が行なっていた情報の整理を、エンドユーザーに行なってもらいます。トップダウンからボトムアップへのシフトです。パラダイム・シフトは、そう簡単に起こせないし定着しません。そう、方策が必要なのです。

最近、私の肌感覚として、ソーシャルウェアの検討が本気化しているのを感じます。それと比例してか、タグの質問も多くもらうようになりました。そこで、私が普段しているタグ付けのお話をチャートにまとめましたので公開します。何か1つでもご参考になるものがあれば幸いです。

 

IBM Notes 9.0 Social EditionとIBM Connections 4.5を貫く一本の線

先週、IBM Notes/Domino 9.0 Social Editionが出荷されました。そして今週、IBMの企業ソーシャルウェアのIBM Connections V4.5が出荷される予定です。

  • なぜNotesはSocial Editionと付いているのでしょうか?
  • ConnectionsのV4.5での機能拡張は、どこを向いているのでしょうか?
  • そもそも、IBMのエンタープライズ・ソーシャルウェアは何を目指しているのでしょうか?そして、Notes/Dominoはどこに行くのでしょうか?

 この2製品の発表を紐解けば、上記の疑問を氷解させる一本の線が見えてきます。今回は、普段私がお客様に話しているその辺りの話をスライドにしてみました。是非、御覧ください。

 

IBM Connect 2013 オープニング・ジェネラル・セッション 前半

先週、IBM Connect 2013(旧名Lotusphere)が開催されました。深夜にLivestreamで生中継があったのですが、昼間は当然仕事で、また私は元来朝型なので深夜はつらく、結局、公開されている録画を何とか見てキャッチアップしようとしているところです。

 

ということで、まずは基本中の基本のオープニング・ジェネラル・セッション(OGS)です。これを見れば、IBM Connectで発表されるメジャーどころの内容はだいたいカバーできます。

 

ibmsoftware on livestream.com. Broadcast Live Free

 

最初は、IBMの事業責任者やゲスト・スピーカーの話などがありますが、まぁ飛ばさせていただいて・・・。前半の山であるソーシャル系のお話を。

 

 

登壇してきたのは、Sandy Carter。グローバルの営業責任者です。営業といっても、彼女自身は、ものすごくソーシャルメディアを駆使している人で、自身のソーシャルビジネスに関する知見をまとめて、本を出したりしている人です。

その彼女がソーシャルウェアを定着化させるための10のベストプラクティスを発表しました。詳しくは別セッションで解説があったのでしょうけれど、OGSの場で言いたかったのは、「ソーシャルウェアといっても、ただのツール。活用するノウハウも合わせて必要。」ということでしょう。そのノウハウを持っているのがIBMの強みでもあります。

また、企業のソーシャル化は、一つの旅みたいなもので、簡単には実現できません。それをSandyは、「ソーシャル定着化はダイエットと同じ。ライフスタイル・チェンジなのよ。」と表現していました。

 

次に、いよいよ製品の話です。スピーカーは Jeff Shick。ソーシャル製品の総責任者です。ソーシャルといっても、製品はIBM Connectionsだけではありません。Sametimeも、Notes/Dominoもソーシャル製品の一部です。今年出てくるそれらの製品の新バージョンで何が出来るのか、デモを交えて見せていました。

まずは、IBM Connections NEXT。タイムライン上で動画が埋め込んでプレビューできるデモから入ります。うちのCEOもそうですが、動画で経営メッセージを社員に伝えるのは、マネージメント層のユースケースの1つでしょう。それがタイムラインに載ってプレビューもできるとなると、メッセージの浸透度合いも違ってくるというものです。

 

 そして、IBM Connections Content Manager(CCM) の発表です。

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これは、IBM Connections上で、従来型のファイル共有が出来るというものです。つまり、階層型フォルダ、ファイル登録ワークフロー、チェックイン・チェックアウト、などですね。私は、今回、このCCMの発表が大きいと思っています。というのは、ソーシャルウェアで個人がファイルを自由に共有して、タグをつけることで自然に整理されて・・・という世界は、大げさに言えば企業文化の変革を伴うものですから、一足飛びに実現できるものではありません。それがCCMによって、従来型のファイル管理方法から始めて、ソフトランディングで徐々に、ソーシャルファイル共有に移行するということができると思うのです。今まで、IBM Connectionsを説明したお客様には、ほとんど、このような従来型のファイル共有はできないの?と聞かれてきました。これからは、「出来ます!」と言えます。また、ただ出来るだけでなく、いいねやコメント、タグ付け、フォローなどのソーシャル要素も出来るので、これは非常に強力です。早く試してみたい機能の1つですね。

 

続いて、IBM ConnectionsとSametime Web Meetingの融合。

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 IBM Connectionsのコミュニティに入ってる人をパッとあつめて、コミュニティ内で共有されているファイルをみんなで見ながらミーティングというデモです。上の画面コピーを見ると、参加者が複数見えますね。マルチビューです。これは、Sametime NEXTで実装されてくる予定の機能です。Connections NEXTはSametime NEXTと、より密に融合してきます。もちろん、このWebミーティングは、モバイルデバイスからもマルチビュー対応で参加できる予定です。

 

 次に出てきたデモが非常に興味深かったです。

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 なんと、テーブル位大きいタブレット(もはやタブレットとは言わない?)を使って、IBM Connectionsを操作しているのです。昔、何かのSF映画で、テーブルがスクリーンになっていて、それを操作しながら作戦会議をするなんていうシーンがありましたが、まさにそれです。これは、Foresee社というIBMのビジネスパートナー様のソリューションです。IBM Connectionsのコンテンツと連携し、誰にどの仕事をアサインするか、だなんていうシーンをデモで演じていました。

YouTubeにForesee社のデモ・ビデオがあったので、以下に貼っておきます。本当に、未来はここまで来たという感があって、ワクワクしますね。

 

こういう大きなタブレット、机に置いて使うようなタブレット、どうやら"テーブルPC" というカテゴリがあるようです。検索すると、沢山見つかります。各社出していて、以下のLenovoのビデオを見ると、こりゃテレビは駆逐されちゃうな、と思うのです。家庭で広がれば、コンシューマライゼーションの流れで、企業にも来ますよね。

 

 

さて、次はNotes/Domino Social Editionです。

ここで言いたいのは、ずばり、"Notification to Partcipation" というメッセージです。つまり、単にメールで通知されるだけのことから進化して、通知されたら行動にすぐ移すのだ、というメッセージです。そのために、Notes/Domino Social Editionは、IBM Connectionsからの、"お友達申請があります”、”あなたにファイルが共有されました”、”つぶやきにコメントがあります”、といった通知メールの中かから、すぐにアクションを起こせるように、メール文書とIBM ConnectionsのUIを統合しているのです。統合できるシステムは、IBM Connectionsだけではなく、OpenSocialという規格に則ったシステムであれば可能になります。これは、ソーシャルウェアを使ってもらうという点で大きな効果があります。使ってもらうには、研修や啓蒙活動などの運営側の努力が必要ですが、テクノロジー側から出来ることもあります。Notes/Domino Social Editionは、その解の1つです。

このお話は、2月19日開催の日経BP無料セミナー「ソーシャルが拓く 新しいコラボレーションの姿」で、US IBMのエグゼクティブのジョン・ベックと私が解説しますので、是非、お越しください。ただいま受付中です!

 

そして続くのが、IBM Connectionsのファイル共有機能の進化。IBM Connectionsは、ローカルで作ったファイルをドラッグ&ドロップでサーバー上に保管し、それをWindowsやMacやタブレットPCなど、いろんなデバイスでダウンロ-ドして見ることができます。新しい機能では、それを同期することが出来ます。つまり、ファイルに更新があったら、自動的に認識し、新しいバージョンのファイルをダウンロードしてくれるのです。iPhone, iPadであれば、Apple Push Notification Serviceで更新があることを知らしてくれます。これも待ち遠しい機能ですねぇ。今でも、更新があればメールで自動的に知らせてくれるようになっていますが、ダウンロードするというのはちょっと手間です。この機能は、言ってみれば、ソーシャルに対応した企業内Dropboxと言えるでしょう。

 

iPadでのモバイルファイル共有のデモの流れで次に出てきたのは、IBM Docs。

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IBM Docsは去年の末にパブリッククラウド上でリリースされ、Google Docsみたいに、ブラウザー一本でワープロ、表計算、プレゼンファイルの作成・編集が出来て、それが複数人で同時に編集可能で、在席確認、コメントなどを使って、コラボレーションしながら1つの文書を共同編集できます。それが、今回、モバイル対応しますというものです。タブレットで同じように共同編集できます。ポイントは、オフラインでも編集作業ができるというところかなと思います。次にネットワークにつながったときに、編集作業内容はサーバー上のファイルと同期が取られます。先にご紹介した、Connections Content Managerと組み合わせれば、モバイルでファイル登録ワークフローを使って承認したり差し戻したり、差し戻されれば修正して、また承認申請を出したり、だなんてことが可能になりそうです。

 

さぁここまでで、いろんな新機能計画の発表がありましたが、強調されていたのは、"Mobile First"、"Cloud First" というキーワードです。世の中で言われている"Mobile First"とはちょっと違うのですが、つまりは、モバイルでの機能実装も、クラウドでの機能提供も、オンプレミス以上に考えていますよというメッセージです。この通りだとすると、パブリッククラウドのコラボレーションサービスのIBM SmarterCloud for Social Businessは、今年、大きく進化するはずです。楽しみですね。

 

デモの後は、ソーシャルビジネスのお客様事例で、BOSCH社のCIOのGERD FRIEDRICH氏がご登壇。グローバリゼーション、社内外を巻き込んだイノベーションの醸成、業務のスピード&効率化、という3点を課題として持っていて、今まさにIBMと一緒にソーシャルで解決すべく取組んでいるという内容でした。ここでのポイントは、その展開計画の長さですね。簡単なロードマップが書かれていたのですが、なんと2011年から始まって2020年までありました。10年計画です。FRIEDRICH氏は、チェンジマネジメントが大事と言っています。そうなるとやっぱり短期では難しいですよね。でも取り組まなくてはいけない。だから他社に先駆けて早く着手する。横並び意識からは決してこういう発想にはならないですよね。欧米企業の競争力の強さを見た思いでした。

FRIEDRICH氏は、10年計画とはいえ、すぐに着手して改善できる部分は沢山あると言います。まずは小さな成功体験を積み重ねていこうということでしょうか。最後に彼はこう締めくくりました。「Just Do It !!!」

 

 

ここまで読んでいただいてありがとうございました。大分長くなってしまったので、後半はまた後日アップしようと思います。Webでのカスタマー・エクスペリエンスの話や、全米クイズ王者に勝ったWatson君のビジネス利用の話などが続きます。それでは!

ナレッジの交換こそが進歩につながる

 

Ted.comでマット・リドリーが披露している「When ideas have sex」というプレゼンが面白いです。NHKのスーパープレゼンテーションでも取り上げられています。

 

 

「2人の原始人がそれぞれ斧と槍を両方作りました。一人は、もう一人よりも短時間で作りました。では、この早く作り終わった原始人が全ての斧と槍を作るのが、一番効率が良いでしょうか?そうではありません。よくみると、槍だけはもう一人の方が早く作れています。一番効率のいい方法は、斧は最初の原始人、槍はもう一人の原始人が分担して作ることなのです。」

 

こんな話から始まって、人類は、自分が持つアイデアやナレッジに専門化(Specialization)し、他の人と交換(Exchange)することによって、進歩してきたことをプレゼンしていきます。

 

これは、企業内コラボレーションに対する示唆を多く含んでいると思います。

 

企業は元々、役割分担して組織化し、価値を生産する場所です。Specializationは元から出来ています。しかし、Exchangeはどうでしょうか?異なる専門性を持った社員間で、アウトプットやアイデアを共有・交換するということが出来ているでしょうか。仕事のプロセスとして組まれている場合は、当然出来ているのでしょう。しかし、新しいものを生み出す、非定型業務においては、まず出来ていないことがほとんどなのではないでしょうか。

 

Exchangeの反対を指向している人もいます。

私は以前、「資料は一人で作るものだ。腹落ちさせたものを作るにはそれが一番。他の人の資料を流用すると、考えなくなる。」という考えを持った方の話を聞いたことがあります。確かに一理ありますが、万事が万事、このやり方でやっていては、仕事が回りません。

 

NHKスーパープレゼンテーションでは、番組の最後で伊藤穣一さんが解説しています。「昨今の複雑性は一企業だけで抱えられものではなく、複数の企業間で協調して製品・サービスは作られる。それが今後さらに加速し、個人個人までに分解されて、グローバルレベルで共有される"Commons"が広がっていく。」これは、伊藤穣一さんが提唱している「創発」です。ボトムアップが世界を変える、そんな発想です。

 

企業が競争力を維持・向上させていくためには、ナレッジの交換による継続的な価値創造が必要です。その実現手段としてのボトムアップによる創発。それを実現する基盤が、専門性を持った社員個人個人が自由に情報を発信し交換するエンタープライズ・ソーシャルウェアなのかなと、ぼんやり考えていたのでした。

Facebookの独自検索エンジン「Graph Search」の企業向けサービスを考える

GIZMODOに、”Facebook、Googleに宣戦布告! 独自検索エンジン「Graph Search」を開発” というエントリがアップされています。Facebookがソーシャルグラフを利用した新しい検索エンジンを提供するという話です。

 

気になる部分を以下に引用します。

でも今日発表された検索エンジンのモンスターは、友達を探す手段にとどまらず、さらにGoogle検索の代替以上のものにもなっています。自分が関心を持つすべての情報をソーシャルライフの文脈に引き寄せ、自分に近い人の間で話題になっていることを優先し、ただインターネットで人気があるだけの検索結果ははじいてくれます

 

この検索機能、企業内にも入ってくる匂いがプンプンします。コンシューマライゼーションというやつでしょうか。自分のソーシャルグラフを使って、全社から検索した結果をフィルタリングしてくれて、自分に関係のある可能性の高いものを検索結果として返してくれるようになることが想像できます。

 

企業内で、皆がソーシャルウェア上にコンテンツを置くようになり、ソーシャルウェアにこの機能が実装されると、ちょうど、自分の同僚のPCを横断的に検索してくれるようなイメージが出てきます。効率的な検索が出来て、便利そうですよね。

 

IBM Connectionsはどうかというと、今は、ソーシャルグラフをレコメンデーションに応用しています。「あなたにはこのファイルが必要ですよ」と教えてくれます。言ってみれば、これはソーシャルグラフを利用した新しい情報のPUSHの形です。FacebookのGraph Searchは、ソーシャルグラフを利用した新しい情報のPULLの形と言ってもいいでしょう。

 

現在のIBM Connectionsの検索画面は以下のようになっています。

 

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将来、「Graph Search」が実装されると、赤枠でくくった選択肢に、"マイネットワーク内のコンテンツを検索" だなんて項目が増えてくるのかもしれませんね。

 

Notesアプリがソーシャル化すると、こうなる!

 YouTubeで以下のビデオが公開されています。Notesで作られた社内IT障害受付Webシステムで発行された1つのトラブルチケットが、Connections、Notes、iNotesと連携してシームレスに処理されていく様が分かります。


OpenSocial in IBM Connections, Notes and iNotes

 

デモストーリーは以下の流れになっています。

  1. プリンタの不具合に困ったフランクが、トラブル管理Webシステム(XPagesアプリ)に入力してチケットを発行します。デモ上、対応者としてサマンサをアサインします。
  2. サマンサのIBM Connections上のActivity Stream (タイムライン)には、フランクからトラブルチケットが発行されたことが確認できます。そのタイムラインエントリーのプレビュー画面で内容を確認し、そこかトラブル管理Webシステムに直接、「すぐに対応します」とコメントを入力します。
  3. サマンサは、IBM Connections上からメールを見て、同じようにトラブルチケットのメールが来ているのを見ます。メールからもトラブル管理Webシステムにコメントして、「紙は入れてありますか?」と入力します。
  4. サマンサは、Notesクライアントでメールを開き、トラブルチケットのメールが来ているのを見つけ、メールのプレビューから「電源は入っていますか?」とコメントを入れます。
  5. フランクは、トラブル管理Webシステム上でサマンサからのガイドを見て、対応結果を入力。「電源が入っていませんでした・・・」
  6. サマンサは、iNotesでメールを開き、トラブルチケットのメールからフランクの対応コメントを確認し、このトラブルチケットをクローズします。

 

プレビュー画面からシームレスに処理できるのは、OpenSocialというウィジェットの仕組みを使っているからです。IBM Notes/iNotes 9.0 Social Editionでは、このOpenSocialに対応したのが一番の売りです。OpenSocialウィジェットはオープンな仕様なので、XPagesでなくても、他社アプリケーションとの連携が可能です。SAPのワークフローの承認通知を受けて、Connections上、Notes/iNotes上で直接承認処理を行うといった感じです。

 

このデモアプリケーション、今月末のIBM Connect 2013の中のBreakout Sessionで解説されるようです。私は今年は行きませんが、行かれる方は是非見に行ってみて下さい。

 

ソーシャルとタレント・マネージメントとの幸せな関係

IBMがKenexaという会社の買収を完了しました。Kenexaは、向こうの人は"ケネクサ"と発音しています。なんと、買収金額は13億ドルです。Lotusを35億ドルで買収したことを考えると、その4割弱の金額であり、IBMとしてはかなりの投資を行ったと考えられます。一体、Kenexaとは何なのでしょうか。なぜIBMはこんなに投資するのでしょうか。


■タレント・マネージメントという世界
タレント・マネージメントという言葉を聞いたことがあるでしょうか。日本では人材管理と訳されることもあります。昔から企業経営には”人・物・金”が大事とよく言われますが、タレント・マネージメントは、その”人”を対象にしたソリューションです。そうなると、昔ながらの話かと思いきや、2012年のCEO Studyを見ると、企業の経済価値を維持するための一番大事な要素として、人材が挙げられています。ツールベンダーが言っているのではなく、世の中の経営者が、今まさに挙げている課題なのです。



なぜ今、改めて人材管理なのか?端的に言うと、それは、人材の流動化が激しくなってきているからです。今、US企業の離職率は年間15%と言われています。そして、抜けた人材の穴を埋めるのにかかるコストは、 SHRMの2011年のレポートによると、年収の200%となっています。とてもコストがかかりますね。それも、流動するのは優秀な人材でしょうから、すぐに穴を埋めるのは容易ではありません。売上の80%を上位20%の営業が稼ぎ出している、プログラムコードの80%が優秀な20%のプログラマーによって書かれている、などとよく言われるように、抜けた穴は早急に埋めなければなりません。そもそも、抜けないようにしなければなりません。


日本にいる私の肌感覚としても、IT企業ではとくに流動が激しくなっているなと感じます。LinkedInの厚盛の影響が大きいのでしょう。私はもう44才ですが、LinkedInを見て私にコンタクトするヘッドハンターは多いです。回りの同僚を見ても、優秀な人であればあるほど、その傾向は強いです。ヘッドハンターから魅力的な条件を出されたら、いくら終身雇用が当たり前という時代に入社した人でも、より自分が活躍できて、より収入が得られる環境に行ってみようかと思っても不思議ではありません。


ということで、このタレント・マネージメントという世界、市場規模は現在40億ドルから60億ドルと言われています。Oracle社はTaleoというソリューションを買いました。SAP社はSuccessFactorsという買い物をしました。そしてIBMはKenexaを買収したのです。Capterra社の調査では、Kenexaはこのエリアで知名度No1になっています。


■Kenexaが提供するタレント・マネージメントとは
タレント・マネージメントは、企業における人材管理。ソフトを導入すればいいってものではありません。そのため、Kenexaは以下のようなコンサルティングサービスをもっています。

  • Recruitment process outsourcing
  • HCM Service
  • Behavioral science
  • Implementation

一番目のRPOは、日本では”採用代行”だなどど訳されているようです。”採用代行”で検索してみると、結構な数のサイトがヒットします。タレント・マネージメントは、海の向こうの話ではなく、日本でも起こっているのです。
3番目のBehavioral scienceは"行動科学"と訳されます。最近、ゲーミフィケーションという文脈で、如何に社員にモチベーション高く仕事してもらうかということが議論されますが、それに近いのではないかと思います。


そして、ソフトウェア機能です。KenexaはSaaS型で提供するクラウドサービスです。以下の機能を提供します。

  • Recruiting
  • Onboarding
  • Learning
  • Performance Management
  • Assessments
  • Compensation
  • Surveys

なんと、人の採用などというところから始まって、新人研修、日々の学習、業務目標管理、目標達成管理、報酬管理、社員満足度調査まで行えるという、すごく包括的なソリューションです。IBMらしいですね。


■IBMソリューションとの融合
Kenexaは、人を管理するシステムとサービスです。ソーシャルも人を中心として考えられているシステムです。この2つのシステムの相性が悪いはずがありません。ソーシャルと融合することで、スキル保有者をすぐ見つけてプロジェクトチーム編成する、オンライン学習を媒介にしてつながった社員間でOJTを通して学習スピードを向上させる、ソーシャルのつながり上で業務目標を可視化してダイナミックにサポートを得たりサポートをしたりして行動をスピードアップする、ソーシャル上で業務達成状況を可視化してモチベーションを喚起する、などといったことが期待されます。


ビジネス・プロセス・マネージメントと連携すれば、バリューチェーンの各フェーズと連携して、目標設定->学習->実行->達成->レビューということが可能となり、ボトルネックとなっているプロセスの人に依存した原因究明や、プロセス自体のスピードアップにもつながるでしょう。さらにアナリティクスと融合すれば、ビジネス・プロセス・マネージメント上でのワークフロー上で、社員が判断を早く・正確に行えるようになるでしょう。




企業内ソーシャルウェアは、イノベーションを生み出す!、組織を超えたコラボレーション!などという獏としたものから、実利的なものへ移行しつつあります。その内の大きな1つがタレント・マネージメントとの連携です。ソーシャルは人を中心に考えられたやわらかいシステムであり、タレント・マネージメントはそれに比較するときっちり管理するかたいシステム。その両者が融合されることによって、どんな新しい世界が実現できるのか、これから楽しみです。その世界は、来年1月の最終週に行われるIBM Connect 2013で明らかにされることでしょう。