コラボレーション・エンジニアの考える日々

企業での情報共有とコミュニケーションについて、ITを中心に企業コラボレーションを考えていくブログです。

プレゼンはシリアスなテーマほどユーモアを混ぜる

プレゼンでは、ユーモアを混ぜることで効果的になります。しかし、単なる受け狙いは、プレゼンの印象を悪い意味で軽くしてしまいます。

 

効果的なユーモアの1つの使い方は、真面目で重要なテーマを際立たせるために使うことだと思います。ちょうど、スイカの甘味を強調するために、塩を振りかけるように。

 

以下のフランク・ウォレンのプレゼンは、送ってもらった秘密を公開するWebサイトの話です。シリアスな秘密とユーモアのある秘密を交互に織り交ぜながら紹介しています。意識的かどうかは分かりませんが、話し方や表情を、シリアスとユーモアではまったく変えています。そのため、シリアスな部分がより強調されながらも、重くなり過ぎず、非常にバランスのとれた印象を受けます。

 

 

ユーモアといっても、なかなか難しいですけどね。プレゼンする人のキャラもありますし。プレゼンの高等技術に入る部類のものだと思います。私もまだ全然できていない分野です。TED Talkでは、ユーモアをうまく使ったプレゼンが多いので勉強になります。まだまだ精進です。

新しいMac OSで、タグがいよいよ世の中に浸透するか!?

2013年6月、AppleのイベントWWDCで、Mac OS X Marvericksが発表されました。もうレコーディング動画も公開されていますね。私はMacは持ってないのですが、毎回、へーってな感じで横目で見ています。

 

沢山の魅力的な機能拡張があるのですが、私が注目したのは「タグ」のサポートです。

 

WWDCイベント会場では、タグのサポートが発表された時、一人だけ、熱狂的に叫んでいた人がいました。私もそんな気分です。やっと、まともなタグ付け機能がPCに実装されるんだ、と。

 

ソーシャルウェアの話をお客様に日頃する時、ソーシャルタギングの話もするのですが、なかなか知っている人が少なく、その威力を毎回一から説明しています。普段使うPC環境で、まともなタグ付け機能がOSレベルで使いやすく実装されれば、こんな状況は変わるのになぁと、ずっと思っていました。

 

やっと登場です。

 

インターネットで行われているタギングが、MacのローカルやiCloudのファイルに対して付けられて、後から検索できるようになります。レコーディング動画では、24分目からタグのデモが始まります。

 

1つのファイルに、複数のタグが付けられて、複数のタグで絞り込んで検索できます。タグ付けも、ドラッグ&ドロップで付けられたり、さすがのMacの操作性。どんなファイルにもタグ付けできるようです。タグ・エバンジェリストの僕としては、これだけでMac買っちゃいそうです。

 

実は、Windowsにもタグ付けの機能があります。でも、タグ付けできるファイルの種類が限られています。これは致命的。タグ検索の方法も、知る人ぞ知る的な操作でしか行えません。タグ検索を可能にするツールも出回っていますが、タグ情報をファイルの外部で管理するので、コピーなんかしているうちにすぐに整合性がなくなります。

 

タグは、フォルダ階層での管理よりもずっと柔軟で、ずっと拡張的です。さらにそれが共有されると、いままでにない情報共有の活性化につながります。Mac OS X Marvericksが出たことで、Windows OSも追従するかもしれません。

 

Mac OS X Marvericksは、タグ付けという新しい世界へ、皆を連れて行ってくれることでしょう。

 

<関連エントリ>

情報の沈殿から共有活性化へ ~ ソーシャルタギング活用法

 

 

社内ソーシャルは組織を透明になんかしない

社内ソーシャルが組織を透明にするのではありません。透明になろうとしている組織が社内ソーシャルで透明になるのです。そういうように、つい最近、理解しました。

 

社内ソーシャルで、組織の縦横の壁を取り払って、組織を超えたコラボレーションを実現する、組織をフラット化する、などとよく言います。しかし、このようなことは、古くはメールの導入時に言われていました。そしてグループウェア時代にも同じように言われました。そして、それを懸念する人々がいました。「取締役に平社員が直接メールするようになったら、どうするんだ!」、「会社への不満をグループウェアに書かかれて共有されたらどうするんだ!」。

 

しかし、そんなことは起きませんでした。

 

「取締役にメールするなんて恐れ多い」、「見ず知らずの組織の人に、何か言うだなんてありえない」、「自分の意見を、グループウェアみたいな共有の場で言うなんて・・・」などなど。

 

ではなぜ、今日、社内ソーシャル時代に、組織を超える、透明になる、などと再び言われるようになったのでしょう?

 

それは、人の方が変わってきたからだと思うのです。

 

デジタル・ネイティブとはよく言われますが、子供だけでなく大人も、インターネットのダイナミズムに触れた人であれば、それを会社の中にも求めます。

  • mixiやtwitter、facebookで、趣味を同じにする人と出会えて充実した生活が送れるようになった。
  • 有識者と直接やりとりできて、刺激を受けた。
  • 見知らぬ人だけど、twitterでやり取りして、気付きを得た。
  • ブログ書いてたら、出版社の目に止まって本を出した。
  • オープンソースプロジェクトで、世界中の見知らぬ人とものづくりを行い、世界中の見知らぬ人に、自分たちの作ったものを使ってもらい、感謝された。

などなど、いろいろあるでしょう。最後のやつは、私自身も経験しました。OpenNTF.orgというところで、GooCalSyncというオープンソースプロジェクトを立ちあげた時の経験です。その時のことは、このブログに綴ってあるので、お時間があれば、御覧ください。

 

こういった、インターネットのダイナミズムに触れた人々が社内に増えてきて、そこに社内ソーシャルが導入されれば、インターネットで起こったことが社内でも起こります。この現象は、一見、「社内ソーシャルが組織の壁を超えたコラボレーションを実現した」と映るでしょう。でも、裏で働いている力学は違います。

 

社内ソーシャルを入れただけでは、透明な組織になりません。また、社内ソーシャル推進チームなどが一生懸命浸透させようとしても、そうはなりません。人が変わらなければ、ツールを入れても何も起こりません。それは歴史が証明しています。

 

しかし、今、人が変わってきています。インターネットが人の行動や考え方を変えてきています。そのように内部変革が起こっている人々が務める企業は、社内ソーシャルを導入することによって、それこそ、イノベーションが起こるというところまでいくかもしれません。

 

ここまで綴ってきましたが、この考えに至ったのも、知らない人とのtwitterでのやりとりでした。@Paul_ さん、ありがとうございました!

 

人を進化させてきたインターネット。そのダイナミクスを企業内でも実現する。そのお手伝いを社内ソーシャルが担います。

社内ソーシャルは衰退すると言っている人に知って欲しいたった1つのこと

社内ソーシャルは衰退する、そんなトーンの情報が流れているのが最近目に付きます。ガートナーのハイプカーブでいう幻滅期に入ったということでしょうか。

原因の1つは運用・活性化策が足りないということが上げられており、納得できます。これは今、世の中でトライ&エラーを繰り返している状況だと思います。しかし、もう1つとして、社内ソーシャルをtwitterやfacebookのようなつぶやきツールだと思っている節が有り、私はこの点が問題だと考えています。これは、社内ソーシャルウェアをとても狭い範囲でしか捉えていません。2006年頃、社内ブログというのが流行り、そして消えて行きましたが、このままだと、社内ソーシャルウェアは社内ブログの二の舞です。インターネットで起こっているソーシャルのメカニズムを理解し、それを企業内の情報共有や業務に組み込んでいく視点が足りません。

 

なぜつぶやきだけではだめなのか。それを紐解くのは、昔からの情報共有の「フロー」と「ストック」という考え方です。「フロー」は、新着情報や更新情報などの、今を切り取った情報です。フローの名の通り、流れてきて消えていきます。「ストック」は、それとは反対に溜まっていく情報ですね。今、企業内では、殆どの情報がストック情報でしょう。ファイルサーバーなどはその典型です。

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つぶやきはフロー情報です。今までの企業内情報システムにはなかったものです。そのためもてはやされ、「社内ソーシャル=つぶやき」という図式が出来上がっています。東日本大震災でのTwitterの活躍も、その後押しとなっているのでしょう。つぶやきは、ソーシャルの重要な仕組みの内の1つですが、つぶやきが出来ることは限られています。

 

今、世の中の社内ソーシャルの考え方に足りないのは、ストックです。ストックをソーシャル化して、今までにない効果を上げるアプローチです。例えば、ファイル。ほとんどの企業のナレッジはファイルという形式で蓄積されています。ファイルは、ファイルサーバーに蓄積していますよね。活用できていますか?ゴミ溜めになっていませんか?そもそもファイルサーバーにアップされていますか?作った資料はローカルPCかメールボックスに入ったままになっているんじゃないですか?

 

ソーシャル化とは、ソーシャルのメカニズムを取り入れることです。ストック情報を活性化させ、もっと情報を吸い上げ、もっとそれを見える化し、もっと有用な情報を広く共有することが可能です。

 

ソーシャルメカニズムの1つが、「フィードバック」です。皆さんご存知の「いいね!」はフィードバックの1つです。コメントもそうですね。さらに言えば、アクセス記録もフィードバックです。フィードバックは、情報をアップした人のモチベーションを上げ、次もまた良い情報をあげようという気持ちにつながっていきます。情報の吸い上げ効果があるのです。その為、いろいろな形でフィードバックを上げられる仕組みが必要です。(下図)

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アップされた情報は他の人から容易に検索できなくてはなりません。そのためのソーシャルメカニズムが「タグ付け」と「ランキング」です。タグで絞込み、いいね数やアクセス数でランキングして、皆が見ている情報、即ち、有用な情報を浮き上がらせることができるのです。(下図)タグ付けについては、「情報の沈殿から共有活性化へ ~ ソーシャルタギング活用法」もどうぞ御覧ください。

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 見つけた有用な情報は、人のネットワークを通して、加速して全社に、しかし、必要な人だけに共有されていきます。このメカニズムがActivity Streamであり、いいね!です。Activity Streamや、いいね!の情報伝搬効果については以下のプレゼンチャートを御覧ください。

 

 

ソーシャルのメカニズムである、「フィードバック」、「タグ付け」、「ランキング」、「アクティビティ・ストリーム」が、ファイル共有などのストック情報に適用されてソーシャル化すると、今までの情報共有がレベルアップするのです。これらはエンドユーザーによるものであり、管理者によるものではありません。故にスケールします。グローバルでコラボレーションするのに有利なのです。

 

ここまで書いてきたことは、以下のサイトで私がデモ付きで解説しているムービーがありますので、是非、ごらんください。

エンタープライズ・ソーシャルウェアによる新たなワークスタイル

また、CIO特別フォーラムでの私の講演のレコーディングが公開されていますので、お時間ございましたら合わせて御覧ください。

 
Video streaming by Ustream

 

 

ソーシャルのメカニズムを社内ソーシャルウェアにきちんと実装しているツールは殆どありません。故に、「ソーシャル化」の意味もイメージも、世の中に浸透していかないのも無理はないでしょう。しかしこのままでは、TwitterやFacebook風のツールを安易に企業内に持ち込み、失敗し、結局、「そういや社内ソーシャルってあったね」という状況になってしまいます。エンタープライズ・ソーシャルウェアは、ソーシャルのメカニズムで社員1人ひとりのパワーを活性化する、今までにないパラダイム・シフトを起こすプラットフォームです。それに世の中が気づいて欲しい。

 

 

その社内ソーシャルは、ストック情報をソーシャル化できていますか?

行動のハードルを低くする道具

私は、普段、企業ソーシャルを訴求するのに熱のこもったアプローチはあまりしません。イノベーションを起こす、組織の壁を超える、感情の共有、企業変革、などなど。ちょっと遠いところにあるゴールだと思っているので、まずは自組織内だけでも効果の出る部分を最初のゴールとしています。

 

しかし、やっぱり会社内に変革を起こすというところを目指したい。

 

IBM永井さんが以下のブログエントリをアップしてします。

「ものごとを変えるのは、強いパッションと、小さな一歩を踏み出す行動力」...かものはしプロジェクト村田早耶香さんに、会社で講演をいただきました。 - 永井孝尚のMM21

この中で以下のメッセージを伝えています。

「ものごとを変えるのは、強いパッションと、小さな一歩を踏み出す行動力」
「まず自分で行動しよう」
「まず自分が情報発信することが大切」

 

大きなムーブメントも、最初は誰か一人の小さな情報発信なのですよね。その情報発信も、今はエンタープライズ・ソーシャルウェアで行うことができ、ハードルが凄く低くなっています。そして、良いものであれば、エンタープライズ・ソーシャルウェアでのつながりを通して伝搬し、拡散されていく。そんな世界を、永井さんのエントリを拝読し、再度、認識しました。

 

ムーブメントと言えば、この動画。小さな行動がどんどん広がっていく様がよくわかります。私もセミナーなどではたまに流して見てもらっています。

 

情報発信しても、自分の考えなんか誰も見ない? そう思いがちですよね。そんな時は、ちきりんさんの以下のエントリです。

 あなたの文章を私は読んでいます - Chikirinの日記

 

 

最初は少ないかもしれないけど、 情報発信したい人はいるはず。エンタープライズ・ソーシャルウェアは、そういう社員の背中を押す道具。そんな捉え方もあります。

プレゼン・ストーリーは線形に作る

プレゼンではストーリー作成が大事だとよく言われます。以前、ストーリー作成についてのエントリも書きました。(メイキングオブ Lotus Knows EXPO 2010 ノーツセッション - ストーリー作成編)これ以降、気をつけていることがあります。

 

それは、”ストーリーは線形に作る” ということです。

 

よくあるプレゼンの目次に、マニュアルの目次みたいなものがありますよね。以下のように、大きな章があって、それがブレークダウンされていくもの。

1. XXXXXXX   
    1-1 xxxxx
    1-2 xxxxxxx
2. XXXXXXX
    2-1 xxxxxxxx

 伝えたい内容を整理して、把握しやすいように構造化していくと、目次としては上記のようになります。でも、これじゃマニュアルであって、ストーリーじゃない。技術系のプレゼンにありがちなパターンです。「ストーリーを作れ」と新人の頃から言われていましたが、よく分からなかったです。どうしてもマニュアル目次パターンになっていました。

 

私は、分かりやすく伝えるということを考え続けて、”ストーリーは線形に作る”というところに行き着きました。つまり、文学小説のように、1つの物語が1つずつ最初から最後まで”順番に”つながっていく形です。タイムトラベル物のSF小説なんかはその対極にあります。理解するのに頭使いますよね。

 

配布資料としては、マニュアルの目次みたいになるのは良いと思うんです。ちゃんと情報が整理されているのは、後で見返してもらうときに役に立ちます。ただ、プレゼンするときは、線形に順番に並べなおして伝えていくんです。ちょうど、テレビ番組をぼーっと見ていても内容が頭に入ってくるように、頭を使ってもらわなくても理解できるように。

 

Preziというプレゼンソフトがあります。全体像を俯瞰しつつ、部分部分にフォーカスをして説明するのをビジュアルに効果的に行えるツールです。見た目も派手なので人気があります。ただ、私は使っていません。線形に物語を伝えるには、普通のプレゼンソフトで十分だからです。ただ、Preziは単なるツールです。線形にストーリーを語るというのにも使えるはずです。しかし、Preziに使われてしまうと、構造化された内容を見せやすいので、今までの考え方から抜け出せないままになるでしょう。

 

昨日、以下のエントリを読みました。すごく分かりやすいです。

もしも高速増殖炉もんじゅをやめたら、どんな影響があるの?が5分でわかる、25のQ&A

これ、Q&Aという、ストーリーとはかけ離れたフォーマットでありながら、内容は線形になっています。線形という視点で読んでいただくと、私の伝えたかった内容がわかって頂けるかもしれません。

 

 

 

これはもはやドラえもんの道具!同時機械翻訳で活躍するSametime

あのTED TalkでSametimeが登場しているのを人から教えてもらい、見てみました。

 

SametimeのWeb会議機能をベースに、ビデオエンジン、スピーチキャプチャー、そして自動翻訳エンジンを組み合わせて、外科手術の講義で使うというものです。双方向で音声を同時自動翻訳してこういうリモート研修で使えるシステムというのは、探したけれどなかったようです。IBM Researchが協力してシステムを組み合わせて作り上げています。

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人の命を救う技術を世界中に広められる素晴らしい技術ですね。プレゼンターのスティーブン・シュバイツバーグも言っていますが、あらゆる所に応用ができ、そのうち、スマホに搭載されて、だれでも利用できる技術へと進化するのでしょう。

バベルの塔の建設で買った神の怒りによる言語分断が、人間のテクノロジーでまた1つになるかと思うと、なんだか怖い気もしますが。