社内ソーシャルは衰退すると言っている人に知って欲しいたった1つのこと
社内ソーシャルは衰退する、そんなトーンの情報が流れているのが最近目に付きます。ガートナーのハイプカーブでいう幻滅期に入ったということでしょうか。
- 「企業向けコラボレーションツールは時間の無駄」― 実際に利用されているのは Facebook、Twitter
(上記はAvanade社のレポートを5月下旬にjapan.internet.comが報じたエントリでしたが、既に削除されています。英語メディアでのレポートを見つけましたのでこちらを御覧ください。) - They Built It, but Employees Aren’t Coming
- Gartner Says the Vast Majority of Social Collaboration Initiatives Fail Due to Lack of Purpose
- 誰が社内ソーシャルを使うのか
原因の1つは運用・活性化策が足りないということが上げられており、納得できます。これは今、世の中でトライ&エラーを繰り返している状況だと思います。しかし、もう1つとして、社内ソーシャルをtwitterやfacebookのようなつぶやきツールだと思っている節が有り、私はこの点が問題だと考えています。これは、社内ソーシャルウェアをとても狭い範囲でしか捉えていません。2006年頃、社内ブログというのが流行り、そして消えて行きましたが、このままだと、社内ソーシャルウェアは社内ブログの二の舞です。インターネットで起こっているソーシャルのメカニズムを理解し、それを企業内の情報共有や業務に組み込んでいく視点が足りません。
なぜつぶやきだけではだめなのか。それを紐解くのは、昔からの情報共有の「フロー」と「ストック」という考え方です。「フロー」は、新着情報や更新情報などの、今を切り取った情報です。フローの名の通り、流れてきて消えていきます。「ストック」は、それとは反対に溜まっていく情報ですね。今、企業内では、殆どの情報がストック情報でしょう。ファイルサーバーなどはその典型です。
つぶやきはフロー情報です。今までの企業内情報システムにはなかったものです。そのためもてはやされ、「社内ソーシャル=つぶやき」という図式が出来上がっています。東日本大震災でのTwitterの活躍も、その後押しとなっているのでしょう。つぶやきは、ソーシャルの重要な仕組みの内の1つですが、つぶやきが出来ることは限られています。
今、世の中の社内ソーシャルの考え方に足りないのは、ストックです。ストックをソーシャル化して、今までにない効果を上げるアプローチです。例えば、ファイル。ほとんどの企業のナレッジはファイルという形式で蓄積されています。ファイルは、ファイルサーバーに蓄積していますよね。活用できていますか?ゴミ溜めになっていませんか?そもそもファイルサーバーにアップされていますか?作った資料はローカルPCかメールボックスに入ったままになっているんじゃないですか?
ソーシャル化とは、ソーシャルのメカニズムを取り入れることです。ストック情報を活性化させ、もっと情報を吸い上げ、もっとそれを見える化し、もっと有用な情報を広く共有することが可能です。
ソーシャルメカニズムの1つが、「フィードバック」です。皆さんご存知の「いいね!」はフィードバックの1つです。コメントもそうですね。さらに言えば、アクセス記録もフィードバックです。フィードバックは、情報をアップした人のモチベーションを上げ、次もまた良い情報をあげようという気持ちにつながっていきます。情報の吸い上げ効果があるのです。その為、いろいろな形でフィードバックを上げられる仕組みが必要です。(下図)
アップされた情報は他の人から容易に検索できなくてはなりません。そのためのソーシャルメカニズムが「タグ付け」と「ランキング」です。タグで絞込み、いいね数やアクセス数でランキングして、皆が見ている情報、即ち、有用な情報を浮き上がらせることができるのです。(下図)タグ付けについては、「情報の沈殿から共有活性化へ ~ ソーシャルタギング活用法」もどうぞ御覧ください。
見つけた有用な情報は、人のネットワークを通して、加速して全社に、しかし、必要な人だけに共有されていきます。このメカニズムがActivity Streamであり、いいね!です。Activity Streamや、いいね!の情報伝搬効果については以下のプレゼンチャートを御覧ください。
ソーシャルのメカニズムである、「フィードバック」、「タグ付け」、「ランキング」、「アクティビティ・ストリーム」が、ファイル共有などのストック情報に適用されてソーシャル化すると、今までの情報共有がレベルアップするのです。これらはエンドユーザーによるものであり、管理者によるものではありません。故にスケールします。グローバルでコラボレーションするのに有利なのです。
ここまで書いてきたことは、以下のサイトで私がデモ付きで解説しているムービーがありますので、是非、ごらんください。
エンタープライズ・ソーシャルウェアによる新たなワークスタイル
また、CIO特別フォーラムでの私の講演のレコーディングが公開されていますので、お時間ございましたら合わせて御覧ください。
ソーシャルのメカニズムを社内ソーシャルウェアにきちんと実装しているツールは殆どありません。故に、「ソーシャル化」の意味もイメージも、世の中に浸透していかないのも無理はないでしょう。しかしこのままでは、TwitterやFacebook風のツールを安易に企業内に持ち込み、失敗し、結局、「そういや社内ソーシャルってあったね」という状況になってしまいます。エンタープライズ・ソーシャルウェアは、ソーシャルのメカニズムで社員1人ひとりのパワーを活性化する、今までにないパラダイム・シフトを起こすプラットフォームです。それに世の中が気づいて欲しい。
その社内ソーシャルは、ストック情報をソーシャル化できていますか?