EUCは情報の氾濫になってしまうのか?
ノーツに対して、よく言われるのが次のことだ。
「ユーザーが勝手にデータベースをどんどん作って、どこになにがあるのか分からなくなる」
これは、ノーツだからという問題ではなく、エンドユーザーコンピューティング(EUC)が対峙しなければならない課題だ。「だからEUCはダメだ」と考えるのは、思考停止状態に近い。EUCは、各部門の業務改革を進め、IT部門のバックログを減らす優れた考えだ。ある一点がダメだからといって、手放すのはあまりに惜しい。
前回のエントリーで、ノーツでEUCを推進するオリンパス様事例を取り上げたが、僕はその時、EUCに対する以下の課題を挙げた。
- 情報の氾濫につながり、どこにどんなデータがあるのかわからなくなる
- アプリケーションやデータの棚卸が困難になる
- 基盤バージョンアップ時のアプリ対応が困難になる
そのオリンパス様事例の第二回が公開されている。これらの課題について、どう対処されているのか、ここで検証してみたい。
■情報の氾濫につながり、どこにどんなデータがあるのかわからなくなる
オリンパス様のノーツデータベースは、以下のように開発・運用されている。
エンドユーザーが各部門の業務に有用なアプリケーション/データベースを開発する一方、全社共通のものについてはIT本部が専属で管理・運用をしています。
会社全体としては2万個のデータベースがあって、一見、情報の氾濫を起こしているようにみえる。しかし、社員一人一人にとっては、自部門のデータベースと全社のデータベースだけを利用しているので、社員から見れば情報の氾濫にはなっていないのだ。
■アプリケーションやデータの棚卸が困難になる
この点も、前述の開発・運用体制を知れば、対応されている様子が想像つくだろう。全社で管理しているデータベースはIT部門で棚卸するし、各部門のデータベースは各部門で棚卸する。それぞれの各部門からすれば、管理しているデータベース数というのは限られているので、決して困難になるという状態にはならない。
■基盤バージョンアップ時のアプリ対応が困難になる
オリンパス様では、EUCを推進するために以下のことを実施されている。
エンドユーザーによる開発を推進するために、「Lotus Notes開発ガイドライン」を策定して公開している
6種類のテンプレートを公開
標準的なスクリプトをサンプル集として載せています。
これであれば、ノーツ基盤バージョンアップ時のコードの修正内容の把握は、IT部門側で集中的に対応できるので、対応コストは大幅に軽減される。そもそも、今やノーツアプリの下位バージョン互換性は高い。確かに、R4やR5からR6以上にアップグレードするのは大変だった。それは、R6から開発体制がLotus社からIBMに移管され、その歪が出ていたのが原因だ。しかし、R6からアップグレードする場合は、実績として高い互換性が保たれている。
最後に、CIOの北村氏は以下のように述べられている。
「これだけの数があると、“データベースの乱立”とネガティブにとらえられがちですが、データベースが作りやすいからといって製品が悪いと評価されるべきではありません。2万ものデータベースができるということは、いかに開発が容易か、使いやすいかという証です。もちろん、ルールづくりやサポートといった運用管理は必要ですが、それとデータベースのつくりやすさは対立しない、むしろ共生するものだと思います」
製造業において、ものづくりを支えるのは現場だ。その現場のためのツールがEUCであり、ノーツはEUC環境を最もうまく実装しているプラットフォームなのだ。
僕もオリンパス様の製品では個人的にE510を持っていたり、次は、XZ-1を買おうかだなんて考えていたり、周りにはオリンパス製のカメラを持っている人が沢山いたりするなど、オリンパス・ファンは多い。内視鏡をはじめとした医療機器分野での技術力は言わずもながら。
現場の力で、これからも良い製品を世の中に出して行って欲しい。一人のオリンパス・ファンとして、陰ながら切にそう思う。